本研究の目的は、近赤外超短パルスレーザー光を結晶質半導体材料に照射することで、アモルファスへの相変化を誘起し、アモルファス部分の加工を実現することにある。本研究期間においては、アモルファスへの相変化誘起ならびにアモルファス変成部の加工が可能かどうかを探るべく、現有の近赤外短パルスレーザーを用いて、単結晶シリコン (Si) 表面での実験研究を行った。波長 800 nm の超短パルスレーザーであるチタンサファイアレーザーを、レーザーのパルスエネルギーならびに照射回数を変えて、Si 単結晶基板表面に集光して照射し、アモルファス変成誘起やダメージの様子を観測する実験を行った。基板表面の面方位が (100) ならびに (111) の Si 単結晶基板表面において、面方位により加工の進展が異なることや、アモルファス変成からアブレーション加工へと進展する様子が、レーザーのパルスエネルギーにより異なることなどの加工の初期過程に関する知見が得られた。また、Si の微細な欠陥が加工の初期過程に大きく影響することやキャリア密度により加工の進展が変わる可能性を示唆する結果が得られた。また、一定の照射条件下においては、アモルファス変成部がアブレーション加工へと進展している様子が観測され、アモルファスの加工が可能であることが示された。次に、Si 基板を走査することで、表面に線状のアモルファス相を形成する条件を探索し、Si 基板表面にアモルファスのパターンを描画することに成功した。今後は多光子吸収による相変化誘起ならびにアモルファス相の選択的加工の実証実験を継続して実施する。
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