研究課題/領域番号 |
19K05082
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
八重 真治 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (00239716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多孔質シリコン / 半導体加工 / シミュレーション / 触媒エッチング / 金属ナノ粒子 / 半導体電気化学 / 微細加工 / ウェットエッチング |
研究実績の概要 |
本研究では、デバイスシミュレーションによる解析と実験による検証を車の両輪とし、シリコンの金属援用エッチング時の表面および半導体内部の電位分布、局部電流密度(反応速度)分布を明らかにする。これを基に、金属直下のみが直線的に高速エッチングされる条件を見出すことにより、金属援用エッチング(MacEtch)の高度化による新たなシリコン加工技術の確立することが本研究の目的である。 2020年度は、前年度に選定したシミュレーションソフトウェアとワークステーションを導入し、研究グループ所属の松本 歩 助教ならびに大学院学生の協力を得て、これらの取り扱いに習熟するために基本的な半導体デバイスのシミュレーションの再現を行うとともに、簡単な構造モデルを用いて金属援用エッチング時のシリコンおよび金属の電位や電流分布について計算を試みた。金属援用エッチング時のシリコン中での電荷の流れを可視化し、粒子が先導して孔が形成される様子を再現できることが明らかとなった。 シミュレーションを試みる一方で、同じグループにおいて、実験的な研究も昨年度に引き続いて展開した。無電解置換析出により貴金属ナノ粒子を制御してシリコンに修飾し、各種エッチング条件下での電気化学測定および微細構造観察などを行った。これらにより、エッチング条件とエッチング中のシリコンの電位や反応速度および加工特性との関係を明らかにした。特に、シリコン表面付近に形成されるミクロないしメソ多孔質層について詳細な検討を行い、その形成と化学溶解機構を電気化学的に解析した。その結果を学会発表ならびに論文として公表した。学会発表した大学院生が表彰されるなど高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の実施状況報告に記載した2020年度の研究計画の通り、年度の早い時期にシミュレーションソフトウェアとワークステーションを導入することができた。同じく、これを用いて金属援用エッチング時の電位や電流分布の計算を実施することができた。さらに、昨年度に引き続いて、無電解置換析出により金属を制御してシリコンに修飾し、各種エッチング条件下での電気化学測定および微細構造観察などを行い、エッチング条件とエッチング中のシリコンの電位や反応速度および加工特性との関係、特にミクロないしメソ多孔質層の形成機構と溶解挙動を明らかにすることができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、デバイスシミュレーションによる金属援用エッチング時のシリコンおよび金属の電位や電流分布計算の精度向上を図るとともに、その結果をもとに実際にシリコンの加工を行うことで加工精度の高度化を図ることで、本研究の目的である「金属援用エッチング(MacEtch)の高度化による新たなシリコン加工技術の確立」を達成する。これは、これまでと同様に同じ研究グループに所属する松本 歩 助教および大学院学生と共同で行う。 エッチング中の電極電位の予測値と実測値を比較して、シミュレーション精度の確認を行う。両者とこれまでに得られた微細構造観察結果などの比較により、エッチング条件とエッチング中のシリコンの電位や反応速度および加工特性との関係を明らかにする。 さらに、エッチングにより形成されるシリコンの構造すなわち加工特性の再現と、エッチング時の表面および半導体内部の電位分布や局部電流密度(反応速度)分布をシミュレーションにより明らかにする。2次元を基本とするシミュレーションに限界がある場合には、3次元シミュレーションの導入を検討する。 これらを基に、金属援用エッチングの機構の全容を明らかにするとともに金属直下のみが直線的に高速エッチングされる条件を見いだし、高度加工技術を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度にデバイスシミュレーションソフトウェアとワークステーションの仕様を慎重に検討したために、それらの購入が2019年度末までに行えなかったことにより、2019年度未使用額が83万円あまり生じた。2020年度には、そこから33万円あまりを使用したが50万円が未使用として残った。これは、2020年度前半の新型コロナウィルス感染症対策のための一斉休業により、実験研究を実施できなかったことが主な原因である。 2021年度は、デバイスシミュレーションとともに、実験研究の進捗を図り、論文投稿などを進めるために物品費およびその他経費を必要とする。未使用額50万円をそれらの充実に当てる。
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