2020年度の研究では,マグネシウム合金の切欠き感受性がアルミニウム合金と同等であることを明らかにしている.しかしながら,多段ウェットブラスト処理を用いて表面粗さの異なる試験片を作成できたものの,双晶割合の異なる組織を作成することができなかった.そこで,ウェットブラスト処理に代わり,塑性変形により表面の平滑化を図るバニシング加工を用いることで,表面粗さが一定で組織および硬さの異なる試験を作成することとした. 焼鈍処理を行った,AZ31合金に対してバニシング加工を行った.バニシング加工における加工量は0.1mm刻みとして0.1~0.4mmの範囲で変化させた.その結果,加工量が0.1~0.3mmの間では加工量が増加するとともに硬さが増加した.一方で0.4mmでは0.3mmよりも硬さが低い結果を示した. これらの要因について検討するために,EBSDによる結晶方位測定を実施した.0.3mmの場合と比較して,0.4mmの結晶粒は粗大化していることを明らかにした.0.4mm材の表面から50μmの範囲ではひずみ量が大きく,菊池パターンが検出されなかった.また,0.3mm材において,表面から内部方向に向かって結晶粒が粗大化しており,表面近傍で硬さが増加した要因が結晶粒の微細化によるものであると考えられる. 一方で,当初予定していた双晶はほとんど観察されなかったことから,今回の加工量が大きいことも要因として考えらえる.
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