研究実績の概要 |
Nb3Alの上部臨界磁場は4.2Kで約30TとNb3Snより高く、さらに他の超伝導体と比較して、格段に本質的に耐ひずみ特性が優れている。従って、電磁力が著しく高まる高磁場及び大口径磁石では、コイル導体に大きな機械的ひずみが印加されるため、Nb3Al線材の実用化が期待されてきた。しかし、優れた性能が得られる化学量論組成比のNb3Alは約2,000℃の高温でのみ安定で、この特殊性が長らくNb3Al線材の実用化を阻んできた。2,000℃での高温熱処理と同時に、高温相を室温にもたらすための急冷処理を連続的に長尺線材に適用できるプロセスの確立が求められる。我々は通電加熱と金属Ga浴による急冷を組み合わせた急熱急冷法の研究に取り組み、キロメートル級の長尺処理までスケールアップを図った。しかし、同製法では急熱急冷処理後に線材表面に付着したGa及びGa化合物を除去する付帯作業が必要で、さらに安定銅の複合には密着性の確保のために特殊なイオンプレーティング処理を必要とした。実用化をみるには基本となる化学反応や組織制御を維持しつつ、プロセス全体の大幅な簡素化と低コスト化が必要である。本研究では、この急熱急冷法を大幅に簡素化するべく、金属Ga浴急冷から不活性ガス噴射急冷に置き換えた新型急熱急冷装置を開発する。さらにこの新型装置により様々な条件でNb3Al線材を作製して組織と超伝導特性の評価を行い、量産プロセスとしての基盤的知見を獲得する。当該年度は、通電加熱のための印加電圧及び電流、通線速度、急冷のための噴射ガス種と流量/流速、加熱中の線材表面の状態や温度をモニターするための放射温度計及びCCDカメラを搭載した、reel to reelの新型急冷装置を設計及び組み立てに特化して研究を進めた。実際に純ニオブ線を使って各種パラメータを調整しながら基本動作の確認を行った。
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