研究課題
昨年度、新型の連続通電加熱ガス急冷装置を開発した。本年度はこの新装置のセットアップと、実際にジェリーロール法で作製したNb/Al前駆体線材による通電加熱ガス急冷実験を進めた。実験に供した前駆体線の外径は0.7mmで、フィラメント数は222本の多芯構造となっており、フィラメント径は約100ミクロン、フィラメント間バリア材はタンタルである。これまでに、通電加熱及び液体ガリウム浴急冷処理では可能和固溶体が生成されている。新型装置で、通線速度、通電距離(電極間距離)、通電電流値、ガス種、ガス流量などをパラメータとして過飽和固溶体が生成される条件の探査を行ったところ、いずれの条件においても過飽和固溶体が合成されることはなかった。過去に、米国ローレンスバークレー研究所のPickus等は厚さ0.37mmの単芯テープで同様な実験を行い、過飽和固溶体を合成したと報告している。本研究では、Nb/Al複合フィラメントの直径は細いものの、線材外径全体は0.7mmと大きいため、大きな冷却速度を確保できていないことが原因と考えられる。そこで、本年度は、急遽、外径が極細のNb/Al前駆体線の製造に取り組み、同様にジェリーロール法を用いて線材化研究を行った。連携企業の協力のもと、最新鋭の連続伸線加工設備を活用して、最終的に髪の毛より細い外径30ミクロンのNb/Al前駆体線の製造に成功した。ただし、新装置を用いた実験に供するにはある程度の長さが必要で、現状、数百メートルの長さを確保できる外径は50ミクロンである。なお、この極細線は多芯線ではなく単芯線である。線材全体の外径が、これまでの多芯線におけるフィラメント径程度かあるいはそれよりも小さくなっていることが最大の特徴である。以上、前駆体線の超極細化に成功し、連続通電加熱ガス急冷装置において過飽和固溶体が生成される十分な冷却速度を確保できる見通しがたった。
2: おおむね順調に進展している
新型連続通電加熱ガス急冷装置を用いて、まだ、過飽和固溶体を生成できる処理条件を見出すことはできていないが、連続通電加熱ガス急冷装置に供することのできる外径50ミクロン以下の超極細前駆体線材の製造に成功した。前駆体線材の加工技術において非常に大きな進展があった。ガス急冷処理で過飽和固溶体を合成するための十分な冷却速度を確保できる見通しがたった。
髪の毛より細い外径50ミクロン以下の超極細Nb/Al前駆体線材の製造に成功したので、最終年度は、通線速度、通電距離(電極間距離)、通電電流値、ガス種、ガス流量などのパラメータに処理線材の外径も加えてガス急冷処理で過飽和固溶体を合成するための最適条件を見出して、本研究をまとめる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
IOP Conference Series: Materials Science and Engineering
巻: 756 ページ: 012016~012016
10.1088/1757-899X/756/1/012016