令和5年度はこれまでに作製した『中性子反射率法によるめっき膜の成長過程のその場観察システム』のコミッショニングを進め、基材となるガラス基板やSiウェハー上に電解Cuめっきを行い、できたCuめっき膜の評価を行った。以下にこれらの進捗と成果について述べる。 本システムの立ち上げにはまず水を用いて容器および送液ポンプなど系全体での密閉性評価を行った。これは、通常のめっき槽に求められる化学的耐性、温度制御、めっき液均一化(攪拌、フローなど)などの特性に加えて、めっき液の使用量の削減、セル全体の密閉性の確保など放射線汚染抑制対策が必要になるためである。密閉性を確認した後に実際に硫酸銅めっき液を用いて電界Cuめっきを行い、本システムが正常に稼働することを確認した。加えて電流密度などのパラメータを変えるなどのコミッショニングを進めるともに、中和などの放射線施設でのめっき廃液の処理法の検討を進めた。 加えて作製した電界Cuめっき膜の評価を進めた。本装置を用いてAuコートされたガラス(BK7)基板、DLC(diamond-like carbon)コートされたSiウェハーに電解銅めっきを施した。作成した試料をGD-OES(Glow discharge optical emission spectrometry)装置を用いて深さ方向成分分析を行ったところ、Auコート上のCuめっきでは顕著に見えたCuの基材側への浸透が、DLCコートの場合では十分小さくなっていることを確認した。これはDLCがめっき材(Cu)の基材への浸透を抑えるバリア材として機能する可能性を示唆している。
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