研究課題/領域番号 |
19K05091
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
八代 仁 岩手大学, 理工学部, 教授 (60174497)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / セパレータ / 腐食 / アルミニウム |
研究実績の概要 |
固体高分子形燃料電池(PEFC)用セパレータの構造を、流路形成材と隔離板に分離し、流路形成材として炭素系材料を、隔離板としてアルミニウムのような軽金属を使用する軽量の新しい複合型のセパレータを提案した。従来の金属製セパレータでは、最も激しい腐食環境となる膜電極複合体(MEA)との接触部で腐食が生じてMEAが汚染されるため、ここでの耐食性を基準に材料が選択されるが、この部分を炭素系材料とすることで、腐食は回避される。ガス遮断性を担う金属材料は、隔離板として、ガス流路の底部で反応ガスや生成水と接触する。この環境は一般にセパレータに想定される腐食環境より穏やかであると考えられ、従来使用が困難と考えられていた軽金属材料が使用できる可能性がある。そこで、実際にアルミニウムとグラファイトからなる複合セパレータを試作し、発電試験を行うことで、アルミニウムの腐食挙動を評価することを目指した。 はじめに、純アルミニウムおよびアルミニウム合金(7003H)を候補材として取り上げ、従来のセパレータ腐食環境とされるpH3.3の硫酸塩溶液中でアノード分極試験を行った。その結果、いずれも要求基準を大きく上回るアノード電流が流れ、従来のセパレータ構造ではアルミニウム系材料は使用が困難であることがあらためて示された。 一方、試作した複合セパレータを用いて発電試験を行ったところ、500時間発電後、アルミニウム製隔離板にほとんど腐食痕は認められなかった。また、MEAをXRFにより元素分析した結果、アルミニウムによる汚染は認められなかった。このように、ほぼ予想通りアルミニウムをPEFC用セパレータの隔離板として使用できる可能性が実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミニウム-炭素複合セパレータを試作し、発電試験により、アルミニウム製の隔離板の可能性を実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
隔離板として使用したアルミニウム上に生成した不動態皮膜を詳細に分析することにより、アルミニウムが置かれていた環境を推定する。比較として、PEFC中で生成する水を想定した人工の環境中でアルミニウムの腐食試験を行い、生成する不動態皮膜を分析、比較する。 なお、今回の発電試験ではアルミニウム板と炭素製流路形成材との間に接触抵抗が存在していたため、発電電圧が多少小さくなる問題があったため、これを解消する策を考案する。
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