高速で,表面粗さ1nm以下の平滑性を実現する超精密研磨加工技術にとって,研磨時の化学反応性すなわち化学研磨性の発現は不可欠である。この化学研磨性は,研磨対象材の表面に水和層の生成を促進させることに相当するが,その定量的な生成メカニズムは不明であった。そこで,本研究ではさらに一歩進めて,研磨時に生じる電流変化を定量的に捉えることによって水和生成速度を求めること,さらにこれらの計測結果から「化学研磨効率」を超精密研磨技術の重要なパラメータとして提案,規定することを目指している。 令和3年度には,コロイダルシリカのモデル材として熱酸化シリコンを用いた検討を進めていたがS/N比の大幅な改善には課題があり,再現性よく微少電流変化を捉えるにいたらなかった。令和4年度の研究は,令和3年度から進めてきたファインバブルを遊離砥粒と見立てた検討を重点的に進めた。ファインバブルを遊離砥粒と見立てることで,電極設計の自由度が大きく改善できた。そのため,S/N比の改善の目安を付けることができた。微少電流密度の計測については,信頼背の高いデータを取得するまでには至らなかったものの,交流を用いた計測により,「化学研磨における化学反応効率」につながる物性を取得することが可能となった。 令和元年度から令和4年度に至る本研究によって,超精密研磨加工技術に不可欠な化学研磨性と位置づけられる化学反応性は,酸化セリウム,コロイダルシリカ,ファインバブル等の研磨材によらず,化学研磨性を発現するものであれば,すべて剪断応力をトリガーとした電気化学反応である。そのため,定量的な解析が一般的な電荷移動反応の解析を深化することによって可能であることを明らかにできた。
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