本研究では,パルス振動モーション付加塑性加工における潤滑機構の解明を最終目的に,成形加工中の金型-被加工材界面の変形挙動や潤滑挙動のその場直接観察に取り組む.高強度ガラスを観察窓用に金型表面の一部に組み込み,ガラスを介して金型内部から金型-被加工材界面の一部をその場直接観察できる装置を設計・製作し,界面挙動を可視化することによりパルス振動モーション付加塑性加工の加工(潤滑)メカニズムを解明する. 2021年度は前年度までに設計・製作した金型-被加工材界面のその場直接観察装置を用いて,パルス振動モーションを付加した成形加工中の金型(ガラス)-被加工材界面のその場撮影を行った.その場撮影された金型-被加工材界面の撮影画像の画像解析(輝度値)により押出し鍛造中の金型-被加工材界面での潤滑油の膜厚変化を推定した.これには前年度までに選定した可視化用マーカ剤を潤滑油に混合することによって,膜厚により輝度値が変化することを応用した.その場撮影画像の平均輝度値から推定した潤滑油の膜厚変化から,パルス振動付加による逐次潤滑現象が観察され,定量的な考察を行った. 一方,パルス振動付加の負荷・除荷に対する被加工材の微小変形挙動について,前年度までに考案・設計した有限要素シミュレーション解析モデルについて,上記の押出し鍛造を想定したシミュレーション解析を行い,負荷・除荷による金型-被加工材界面の変形現象と逐次潤滑現象を比較した. 以上の加工実験によるその場観察,有限要素シミュレーションによる変形解析の取り組み結果から,パルス振動付加による押出し鍛造中の逐次潤滑現象について,より直接的かつ定量的に議論・考察できた.
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