研究課題
本研究では、鉄鋼中のミクロ組織の形成過程の解明を目的として、マルチスケール中性子イメージング法を用いた非破壊観察手法と解析手法の開発を進めてきた。実験手法の面では、その場中性子測定用赤外加熱炉を導入し、熱処理による金属中のミクロ組織の変化をその場測定で捉えることに成功した。一方、加工により、鉄鋼中に強い磁気散乱が生じることを見出した。これは、加工により磁気的なナノ構造が形成されていることを示す結果であり、ミクロ組織の形成過程を分析する手掛かりになると同時に、磁性材料の高性能化のためにも重要な知見である。解析手法の面では、マルチスケール中性子イメージング法の基礎となる中性子透過率スペクトル解析を発展させ、集合組織の情報を抽出する手法を開発した。また、加工により生じた磁気ナノ構造の起源と特性を明らかにするため、ルクセンブルク大学やラウエ・ランジュバン研究所、オーストラリア原子力科学技術研究機構との共同研究により、マイクロマグネティクスを応用した中性子データ解析手法を開発した。これらの開発結果を踏まえ、マルチスケール中性子イメージング法による実験を行った。炭素鋼や析出ナノ粒子を含む鉄鋼の測定結果により、加熱によるミクロ組織の形成と、加工による変形を捉えることに成功し、析出強化により粒界の拘束が相対的に弱くなり、集合組織が変化する可能性を明らかにした。また、高温のfcc相の挙動を理解するため、純銅の加熱中その場測定も行った。その結果、再結晶集合組織の発達と結晶粒粗大化等を解析することができた。また、よりシンプルな強磁性体であるニッケルを用いて、磁気ナノ構造の詳細と、ミクロ組織の形成に対する影響を明らかにした。以上の結果、本研究により、鉄鋼のみならず銅やニッケルも含めた金属材料におけるミクロ組織の形成過程について多くの知見を得ることができた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
ISIJ International
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