研究課題/領域番号 |
19K05103
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宮本 良之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 上級主任研究員 (70500784)
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研究分担者 |
石川 善恵 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (20509129)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / フロー式照射 / パルスレーザー / 酸化物 / 第一原理計算 / 時間依存密度汎関数理論 / 光学特性 |
研究実績の概要 |
2020年度は酸化亜鉛の照射パルス毎の粒子形状や特性の変化の追跡を行った。2~3パルスの照射によりほとんど多くの粒子の球状化が確認できた。このときに生成した酸化亜鉛球状粒子の蛍光スペクトルを測定したところ、欠陥によると考えられる470 nmとバンド端に近い380 nmを中心とした蛍光が観察された。その後、照射パルス数の増加に従い470 nmの発光強度は減少し、一方で380 nmの発光強度が顕著に増加した。このことから、単に球状粒子を得るためには2~3の少ないパルス数照射で十分であるが、以前報告した液中レーザー溶融法による欠陥が極めて少ない酸化亜鉛球状粒子を得るためにはさらに多くのパルス数照射が必要であることが明らかになった。また。 一方理論では2019年度に引き続き研究ターゲットとしてTiO2結晶(ルチル)を想定し、表面がエタノール分子で被覆されたものをモデルとして準備した。TiO2結晶の表面は最も安定な(110)表面に注力した。2019年度ではレーザー電場の影響を実空間における振動電場で表現していたがそのためには冗長な真空領域の導入が必要で、計算時間と主要記憶容量を必要としていた。2020年度ではその真空領域を必要としないようにレーザー電場をベクトルポテンシャルで表現できるようにコード改変を行い計算実行を可能とした。エタノールの有無でレーザー照射後のTiO2表面のダイナミクスを比較する計算が継続中。一方予定にはない成果として、カーボンナノチューブのレーザー電場による励起がレーザー電場の偏光方向に著しく依存することを見出し、レーザー電場がナノチューブ軸に平行な場合にはナノチューブは容易に破壊されるが、垂直な場合には直径の細いナノチューブが破壊されずに残ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化物金属ナノ粒子の生成条件はおおむねわかってきた。生成されたナノ粒子の光学測定も進みレーザー条件を変えながら狙った光学特性を有するナノ粒子を作成する道が見えてきた。理論では計算手法の改良で計算サイズをコンパクトにすることが可能であり、液相固相共存システムでのレーザー応答のシミュレーションを行う準備ができた。実験成果はこれまでに2件の招待講演で発信でき、理論でも2本の論文を発表することができた。コロナ禍で海外の学術会議の発表予定がキャンセルとなったが、今後オンラインで発表できる見込み。
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今後の研究の推進方策 |
パルスレーザー条件を変えながら狙った発光スペクトルを有する金属酸化物ナノ粒子合成、並びにその大量合成の手法を実験的に探る。また溶液中反応メカニズムに迫るべく、第一原理計算の結果を参照しながら、液中反応ならではの特徴を出せる実験条件の探索を試みる。 レーザー装置のメンテナンス、計算コードの改良を通じ、実験と理論の連携による材料設計の研究の新たな提案に結び付く成果出しを狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議発表予定予算の消失と消耗品購入物品の価格下落、計算り利用料の値下げにより繰越金発生。利用計画として、主に規模を計画より大きめにとった計算機利用料金として用いる。
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