鋳造用スリーブは鋳造における熱制御に大きな役割をもつ。しかし、その発熱量は不明である。このため鋳造の欠陥を防止するための数値伝熱シミュレーションが困難となっている。そこで最初に発熱スリーブを現場と同様な条件で加熱し発熱量を測定する氷熱量計を開発した。 装置は以下の二つのユニットからなる。(1)急速な昇温状態下でスリーブの発熱現象を生じさせるユニット、(2) このユニットを内部に組み込むことが可能な、発熱量を計測するブンゼン氷熱量計。(1)は発熱スリーブをニクロムリボンで巻き耐火煉瓦で周囲を覆った容易に分解・組み立てができるユニットのニクロムリボンに投下電気量を計測できる給電装置を接続してある。試料はニクロムリボンにより急速加熱され、試料に含有されるアルミニウムと酸化鉄の反応で発熱する。(2) のブンゼン氷熱量計は中央部から、発熱部、その回りの氷と水を入れた水槽、さらにその回りの氷点の恒温槽の3つの部分からなる。発熱部の回りの水槽の氷の溶けた量を、融解に伴う体積膨張から測定する事により熱量を計測する。令和1年度に試作した装置は装置の剛性が低く、容器の歪のため、実測された熱量が実際の半分程度になるという欠点があった。令和2年度は新たに剛性が高くほとんど変形しない装置を作成し、この熱量計により室温よりやや温度の高い銅のブロックの熱量を測定し、さらに定電力を印加した実験を行い、開発した装置が熱量計として充分な精度で動作することを確認した。令和3年度はこの装置を用い鋳造用スリーブの正確な発熱量を求め、従来研究で得られた値との比較を行いスリーブの発熱の機構を考察した。また、さらに簡便な計測を可能とするため、銅の厚板で発熱ユニットを覆い銅の温度上昇量から発熱量を求める断熱型の熱量計を新規開発した。令和4年度は新規開発した熱量計の精度検証を行ない結果を論文として投稿、受理された。
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