本研究は,高圧鋳造法(ダイカスト法)において,金型内に溶融金属を流入させ,加圧しながら凝固させる過程における圧力の付加プロセスのメカニズムを解明し,得られる鋳造製品の内部の空孔を最小化させるための具体的手法について検討することを目的としている.2021年度は,ダイカスト実験を実施し,特にダイカスト品中の加圧プロセスに大きな影響を与える溶湯温度の推定方法に着目をして研究を実施した. これまでの研究の成果により,圧力伝達が停止する固相率は63-70%であることを明らかにしている.また,金型の表面処理状態を変化させ,意図的に凝固進展状況に変化を与えることによってダイカスト品中の空孔が変化した.これらの結果から,製品内部の空孔を最小化する手法の確立のためには,金型内の溶湯温度を推定することが不可欠であるといえる.そこで,直接測定することが困難な金型内溶湯温度を推定するうえで重要な情報となる金型温度の予測モデルの構築に取り組んだ. 金型に圧力センサ,温度センサを設置し,成形実験中の温度,圧力変化をロギングするとともに,各ショットに対応した成形機情報も同時に取得した.その結果を用いて特徴量を検討し,機械学習により金型温度と特に相関の高い特徴量を抽出することによって予測モデルを作成した.実際のダイカスト実験時に取得した金型温度を無作為に抽出し,検証データとして予測モデルによる推定結果と比較をした結果,両者の値はほぼ一致しており,ダイカスト中の金型温度の予測モデルを構築できた.
|