研究課題
不純物の含有量が高い粗銅をアノードとして電解精製を行う際には不動態化が起こりやすくなるため,銅および随伴する有価金属のリサイクルを促進するために不動態化を防止する技術が求められている.本研究では,とくにAg および Sb の濃度が高い銅合金アノードの凝固過程で析出する合金相と溶解特性の関係に注目し,組織制御によって溶解性を改善することを目指している.合金に熱処理を施して溶解性を高めるためには,合金の相平衡や組織形成についての基礎的な情報が不可欠となるが,本研究にて作製した Cu-Ag-Sb の合金の観察結果は過去に報告されている三元系状態図と一致しておらず,高温において共存する合金相(固相・液相)の組成について詳細に調査する必要があることが示された.本年度は,幅広い組成で Cu-Ag-Sb 合金を作製するとともに,前年度から開始した高温 XRD による高温相の確認を進めることで,500°C における Cu-Ag-Sb三元系状態図を新たに提案した.その過程で,Cu3Sb に Ag を添加することで高温でのみ生じる金属間化合物を発見し,推定される六方晶系の結晶構造を報告した.本研究で調査したCu-Ag-Sb 系合金の相変態は,粗銅中の Ag および Sb の含有量が高まったときのアノードの凝固組織を理解する上で有用となる.さらに多様な銅合金の相変態について理解するために,Ag,Sb 以外の元素を添加した合金の構造について高温 XRD 試験を行った.
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Journal of Physics and Chemistry of Solids
巻: 169 ページ: 110864~110864
10.1016/j.jpcs.2022.110864