研究課題/領域番号 |
19K05112
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
石川 敏弘 山陽小野田市立山口東京理科大学, 工学部, 教授 (60756104)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金属チタン / 表面 / 光触媒機能 / アナターゼ型酸化チタン |
研究実績の概要 |
チタン金属の酸化反応では、全温度領域において熱力学的に安定なルチル型酸化チタン皮膜が表面に生成することから、これが不動態皮膜として機能して優れた耐蝕性を示す一方で、目的とする光触媒機能は示さない。そこでこれまでは、「強酸で処理した後、高電圧下で酸化する陽極酸化法」や「強アルカリ水溶液中、高圧条件下で行われる水熱合成法」によりアナターゼ型酸化皮膜を形成させる手法が取られていたが、いずれも操作が複雑で高コストであることから、我々は、より簡便な手法で「チタン金属表面に優れた光触媒機能を有するアナターゼ型酸化皮膜を形成させる新しいプロセスの開発」を進めている。これまでの検討の結果、チタン金属を室温でシュウ酸水溶液に浸漬することにより、ルチル型酸化皮膜である不動態膜が効果的に還元除去でき、湿潤状態で酸化安定性に優れた水素化チタンが表面に生成することが明らかとなっている。更に、この還元処理されたチタン金属表面に、アナターゼ型酸化皮膜を簡便に生成させるプロセスの開発に成功した。 具体的には、上記シュウ酸処理したチタン金属板をケイ酸ナトリウム水溶液に浸漬した後、高温の大気中で熱処理するだけで、目的とするアナターゼ型酸化チタン薄膜がチタン金属表面に生成することが、表面のX線回折スペクトル並びにラマンスペクトルの測定結果から明らかとなった。この手法は、強酸、強アルカリ、高圧、高電圧等を必要とせず、極めて簡便な方法であることが理解できる。 上述の手法にて処理して得たチタン金属を用いて光触媒活性に関する検討を行った。254nmに発光ピークを有する紫外線ランプを用い、チタン金属表面におけるUV強度を10mW/cm2に調整し、0.6ppmのメチレンブルー水溶液中のメチレンブルーの分解実験を行った結果、良好な分解特性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チタン金属は、耐蝕性に優れ、人体への安全性が極めて高い一方で、表面には熱力学的に安定なルチル型酸化チタン皮膜が全温度領域で生成することから、これが不動態皮膜として働き、目的とする光触媒機能を付与することが難しかった。従って、これまでは、「強酸で処理した後、高電圧下で酸化する陽極酸化法」や「強アルカリ水溶液中、高圧条件下で行われる水熱合成法」によりアナターゼ型酸化皮膜を形成させる手法が取られていたが、いずれも操作が複雑で高コストであった。しかし、我々のこれまでの知見として既に確立している「シリカ共存系でのアナターゼ型酸化チタンの安定生成技術(T.Ishikawa,et al.,Nature)」を適用して、今年度の研究において新たにアナターゼ型酸化皮膜を簡便に生成させるプロセスの開発に成功した。具体的には、チタン金属板をシュウ酸処理後、水ガラス水溶液に浸漬した後、900℃の大気中で熱処理するだけである。このチタン表面の酸化過程では、チタン金属へのケイ素原子の固溶現象を経由したシリカ/チタニア固溶体形成を経て上記アナターゼ型酸化被膜を生成していると推定している。この手法は、強酸、強アルカリ、高圧、高電圧等を必要とせず、極めて簡便な方法であることから、極めて優れた成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、金属チタン表面に生成させるアナターゼ型酸化被膜構造の最適化を図るとともに、浄水機能が発現し易いチタン金属(穴径の異なるメッシュ等)の形状について検討し、流体解析手法を用いた浄水装置の開発を行ったうえで、各種水中汚染有機物質の分解実験を実施し、広範な環境浄化技術を確立させる。 この開発研究では、人体等に悪影響を与える塩素を使わない浄水技術の開発を目指しており、温浴水の浄化をはじめ、魚介類養殖用の水質改善にも貢献できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの問題にて、当初予定していた日本セラミックス協会の年会が中止となった為
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