研究課題/領域番号 |
19K05114
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研究機関 | 久留米工業高等専門学校 |
研究代表者 |
山本 郁 久留米工業高等専門学校, 材料システム工学科, 教授 (00325515)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 凝固 / 結晶粒微細化 / 振動 / Al合金 / 鋳造 |
研究実績の概要 |
当該年度においては,Al-Cu系合金の共晶組織に及ぼす鋳型振動の影響を調査した. Al-33%Cuの完全共晶組織においては,振動による加振力の増加とともに共晶セルサイズは80μmから40μmへ低下していき,初晶相と同様に微細化させることができることがわかった.一方,共晶セル内の共晶ラメラ間隔は逆に大きくなる結果となった.無振動および振動した時の熱分析曲線を測定したところ,無振動と振動で過冷度に差はほとんどなかった.一方,凝固時間は振動を与えることにより長くなっており,ラメラ間隔が大きくなる結果と一致した.これは,共晶セルの核は,初晶相と同様に鋳型と液面との界面で生成されるが,その成長過程においては,振動による対流により溶質の濃化域が拡散され,一方の相の生成が遅れることに起因するものと考えられた. 亜共晶組成で共晶相が混在するAl-15%Cu合金について,同様に鋳型振動装置を用いて,凝固組織に及ぼす鋳型振動の影響を調査した.無振動試料のミクロ組織は,一方向に大きく成長したαデンドライトとその間隙に共晶が分散する組織となった.一方,振動試料の場合は,デンドライトがセル状に微細化する結果となった.共晶相に関しては,振動の有無によって共晶ラメラ間隔はほとんど変化なかった.これは,熱分析曲線から得られる冷却速度はほとんど差がなかったこと,また,共晶が晶出する固相率は約0.65であり,そのような状況では,溶湯の見掛け粘度が高くなり,溶湯の対流や,溶質の拡散が起きにくく変化が少なくなったと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の実験により,金属材料において重要な相である共晶が振動によりどのように変化するかが明確になった.これにより,様々な合金系の鋳物に対して鋳型振動装置による結晶相の変化が予測できるものと考えられる. これらの結果は,学会等で十分公表できる状況であり,本研究の進捗は概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
現在では,振動鋳型において結晶粒径は1mm程度までしか微細化が行えていない.そこで,既存の微細化手法である微細化剤の添加との併用に関して,実験を行う予定である.特にTi添加はAl合金の微細化剤として広く利用されているため,鋳型振動による微細化との相乗効果について検証する予定である. さらに,本手法により作製した試料について引張試験などを行い,機械的特性の評価を行うことも検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウイルスの影響で参加予定であった学会が開催されなかったため,旅費を利用しなかったこと,また,予定していた論文投稿料等が計上されていないためである. 今年度予定している実験を予定通り遂行するため,特に実験に必要な物品等に利用する予定である.
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