当該年度においては,鋳型振動と接種を組み合わせ,これらが結晶粒微細化に及ぼす影響の調査を行った. Al-2%Cu合金の場合,一般的に微細化剤として用いられているAl-Ti合金を少量接種すると,Ti接種量の増加とともに,結晶粒は微細化していった.さらに振動を与えることで結晶粒は大きく減少し,無振動,無接種では粒径6.4mmであったが,加振力10.7N,Ti接種量0.025%では0.11mmまで微細化することができた. 各試料の熱分析曲線を測定すると,凝固時間は振動を与えることにより長くなり,さらに接種を行うと過冷度が若干小さくなった.このことは,接種による核生成能の増加及び振動による鋳壁からの核生成が同時に起こり,それにより更なる結晶粒微細化が起こるものと考えられた. また,鋳型振動法で作製した試料の機械的特性を調査した.その結果,引張強さ,0.2%耐力,伸びともに加振力が大きくなるにつれて向上することが明らかになった.つまり.鋳型振動法により結晶粒を微細化させると機械的特性も向上することがわかった.一方,ヤング率は,加振力に影響される一定であった.しかしながら,さらに加振力が大きくなると強度,伸びともに低下していく結果となった.引張試験後の破面観察を行うと,破面中にマイクロポロシティが存在しており,加振力の増加とともにその数も多くなっていた.これは,振動により液相面が波打つことで多くの核生成が生じるが,溶湯内への空気の巻き込みも多くなり,これが欠陥となって機械的特性の低下を招くものと考えられた.
|