研究課題/領域番号 |
19K05119
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
中村 一穂 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30323934)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 圧力損失 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、濾過ケークや多孔質膜など微細な間隙(ナノ・マイクロスケール空間)を液体が透過する際に生じる圧力損失の界面科学的な新しい理解とその理解に基づく圧力損失低減法の開発である。2019年度は、微細空間のサイズと固液界面物性の新しい評価方法の開発として、ナノ・マイクロ空間の圧力損失と流動電位を同時に測定する装置の開発をおこなった。具体的には、圧力損失場(粒子充填層)における溶質の吸着挙動と圧力損失の関係について検討を行うための装置開発を行った。測定装置は、測定精度および広範な粒子や溶液条件におけるデータの蓄積が容易に行えるようにスループットを向上させるため、測定セルとして液体クロマト(HPLC)用にカラムを使用し、粒子の充填を行った。また、測定はHPLCのシステムを用いて、クロマト用のポンプを用いてカラムに一定流速で測定液を送液し、圧力損失の測定を行った。また、カラム透過液の濃度の測定を行えるように電気伝導度検出器を組み込んだシステムを構築した。モデル粒子としてジルコニアの粉末、シリカの粉末、モデルの電解質溶液として界面活性剤(SDS)を用いた。このシステムでは、ポンプからカラムに送液する原液の濃度を純水から測定液にステップ的に変化させることにより、粒子への溶質の吸着を行い、吸着に伴うカラム出口における濃度変化(吸着破過曲線)を検出器で検出した。得られた破過曲線は、新たに開発したソフトウェアの解析を行い、吸着量の算出した。得られた吸着量に及ぼす濃度の影響を解析し、ジルコニア表面へのSDSの吸着等温線を決定した。吸着等温線は、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の前後で大きく変化し、低濃度がわではS字型の変化、CMC以上では一定の値を示した。また、破過曲線と同時に脱着曲線について測定し、開発した方法により吸着の速度論的な解析が可能であることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、主に測定装置および解析方法の開発を行った。開発した装置と解析方法により研究を進める上で必要なデータが測定できることが確認された。さらに、吸着破過曲線法では吸着のカイネティクス解析も可能なことがわかり、計画よりも深い解析が可能であることが分かった。流動電位の測定に関しては、PEEK製のカラムへの充填がうまくできず、ステンレス製のカラムを利用したため吸着破過曲線の測定用とは別に測定セルを作成する必要があることが分かった。
|
今後の研究の推進方策 |
R2年度①ここまでの開発により、吸着等温線の測定が可能となった。引き続き、得られた吸着破過曲線と流動電位(界面動電現象)の関係を検討できる装置の開発を行う。開発にあたり、これまでの開発経験を踏まえ、測定精度および広範な粒子や溶液条件におけるデータの蓄積が容易になるようにスループットを向上させるため、測定セル(カラム)の小型化や制御・データ収集システムの工夫を行う。 ②代表的な粒子による圧力損失、流動電位、電解質濃度依存性のデータベース化 これまでジルコニア、シリカ粒子について吸着破過曲線の測定を行った。このデータと圧力損失、流動電位、電解質濃度の影響を評価し、それらのデータの蓄積を行う。装置の圧力損失測定範囲の関係からモデル粒子として、シリカを選びその表面改質を行うことにより様々な表面の模擬を行う。 ③界面動電現象に基づくナノ・マイクロ空間の圧力損失モデルと解析アルゴリズム開発 吸着等温線が精度よく評価できることから、表面電荷密度と流動電位の関係を表現する微細空間内の電気二重層を記述するモデルについて、吸着等温線を組み込んだ解析を行う。吸着等温線から予測される表面電荷密度を推算し、1つの流動電位から間隙サイズを決定する解析アルゴリズムを確立する。解析により得られるナノ・マイクロ空間内の電気二重層内の情報と圧力損失の関係を定量化する。
|