研究実績の概要 |
本研究の目的は、濾過ケークや微細な間隙(ナノ・マイクロ空間)を液体が透過する際に生じる圧力損失の界面科学的な新しい理解と、その理解に基づく圧力損 失低減方法を開発することである。2019年度には、微細空間のサイズと固液界面物性の新しい評価方法の開発として、ナノ・マイクロ空間の圧力損失と流動電位 を同時に測定する装置の開発を行った。圧力損失場として、カラムに充填したジルコニア、シリカの粉末に対して界面活性剤の吸着破過曲線を測定 し、吸着等温線を決定した。2020年度は、前年度に開発した装置および界面活性剤との吸着平衡に関する知見に基づき、多孔質ガラス膜を圧力損失場として選定 し、細孔表面の表面改質(親水性(未改質表面)、疎水性(ODS改質表面))及び、溶質(KCl, 陽イオン界面活性剤(DTAC), 陰イオン界面活性剤(SDS))が圧力 損失に及ぼす影響について検討した。KCl水溶液の濃度依存性について詳細に検討した結果、希薄濃度領域でKCl 濃度の上昇に伴い透過流束が上昇することが明らかになった。この変化は、細孔内の電気二重層の重なりに基づく電気粘性効果を反映しており、細孔径の影響に ついて検討した結果、220nm以下の細孔において観察された。そこで、細孔径100nmの膜について、電気粘性効果に及ぼす表面改質の影響と界面活性剤の吸着の影 響を検討した結果、疎水性膜よりも親水性膜の方が電気粘性効果が大きいこと、疎水性表面でかつゼータ電位がほぼゼロの条件で電気粘性効果が低減されることが分かった。2021年度は、さらに多孔質膜素材の表面の影響を明らかにするために多孔質アルミナ膜を用いて、表面改質の影響を詳細に調査した。アルミナ膜においてもシリカ膜と同様に低イオン強度付近で電気粘性効果が増大することが確認され、表面改質の影響から細孔表面の親疎水性の程度に依存することを見出した。
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