研究課題/領域番号 |
19K05121
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中川 敬三 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (60423555)
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研究分担者 |
松山 秀人 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50181798)
吉岡 朋久 神戸大学, 先端膜工学研究センター, 教授 (50284162)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノシート / 分離膜 / 水処理 / ニオブ酸ナノシート / 酸化グラフェン / 異種ナノシート界面 |
研究実績の概要 |
本研究では種々の2次元ナノシート材料を積層した高い分離機能を有する超薄膜型水処理膜の開発を行う.本年度は,Layeredタイプの酸化グラフェン(graphene oxide: GO)/ニオブ酸ナノシート(niobate nanosheet: NbN)複合積層膜の2次元チャネル構造の詳細な解析を行った. 1. GO/NbN複合積層膜における各層の厚み(ナノシート重量)の影響を検討したところ,GO層(上層)が基準の半分でもNa2SO4阻止率は向上し,基準膜とほぼ同等の分離性能になることがわかった.透水係数の値から膜抵抗を見積もったところ,NbN層(下層)とGO層(上層)のそれぞれの膜抵抗の和よりもGO/NbN複合積層膜の方が2倍高いことがわかった.このことから,GO-NbN層間の界面に新たな緻密層が形成していることが考えられる.台湾中原大学のLee教授およびHung教授の協力の下,陽電子消滅法(PAS)による細孔構造の評価を行った.自由体積の変化を示すSパラメータによる解析ではGO層とNbN層の間に遷移領域が見られ,その領域にてSパラメータが減少していることから,その層間により緻密な細孔の形成が示唆された. 2. GO-NbN層間におけるイオンの透過挙動を明らかにするため,分子動力学シミュレーションによりGO-HNb3O8モデルにおける層間隔や各種イオン(Na+、SO42-)の拡散性を解析した.その結果,1.0 nmの層間隔が最も安定であることがわかり,実験結果の妥当性が示された.またGO-GOモデルと比べて,GO-HNb3O8モデルの方がナノシート層間に存在する各種イオンがそれぞれのナノシートとの強い相互作用を受け,拡散係数が大幅に減少することが明らかとなった.これらのことから,NbN層とGO層間に界面緻密層が形成されることにより,高い分離性能が得られることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,GO/NbN複合ナノシート積層膜における2次元チャネル構造の詳細な解析について,実験および分子動力学シミュレーションを用いて行った.それぞれの結果からNbN層とGO層間に界面緻密層が形成していることが考えられる.つまり,各種ナノシートの相互作用による協奏的2次元チャネルの形成が高い分離性能に寄与したと言える.このような異種ナノシート界面における緻密層形成とそれに伴う分離性能の大幅な向上に関しては,過去に報告例はない.本研究のナノシート膜は従来の積層膜とはコンセプトが異なり,例えば課題とされている不完全な積層構造に由来するピンホールや空隙といった非理想的要因の影響を受けにくい,独自性の高いナノシート積層膜と言える.このように協奏的2次元チャネルの形成を裏付ける興味深い結果が得られており,また成果については膜国際学会や論文にて発表し,当初の目的通りに進められていることから,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
GO/NbN複合ナノシート積層膜では興味深い膜性能が得られているが,今後の研究の拡がりを考えた場合,本積層膜の水処理以外の用途や材料面での検討は十分になされていない.異種ナノシート界面を有する積層薄膜の可能性探索のため,令和3年度ではGO/NbN複合積層膜の様々な分離系での膜性能評価,またMoS2等を用いた新規複合型積層膜の検討を進める.
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