研究課題/領域番号 |
19K05123
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐伯 隆 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30253165)
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研究分担者 |
貝出 絢 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (50773074)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抵抗低減効果 / 地中熱利用システム / 採熱管 / 省エネルギー / 流体摩擦抵抗 / ポンプ所要動力 / 抵抗低減剤 |
研究実績の概要 |
当初、当該年度は千葉県にある地中熱利用システムの試験設備を使用し、抵抗低減(DR)効果による送水ポンプの電力削減量の測定、および伝熱データの取得を計画していた。ところが、昨年度末から新型コロナウイルスの問題で、関東圏への出張が一度もできなくなり、その後、コロナに関する諸事情で、借用していた千葉県の試験設備が廃止・撤去された。さらに、不凍液(ブライン)を使った実験の準備と関東以北でのフィールド設備の計画を検討していたが、これらが白紙となった。 そこで、昨年度実施状況報告書に書いたとおり、研究室の採熱管循環系を拡張し、総延長が地上から3階までの3つの配管系を用い、電力削減量の測定、DR効果の変動・長期運転に関する諸データを蓄積した。また、千葉県の試験で問題となっていたDR剤の劣化について、詳細な検討を行った。当初、劣化は循環水の水質や流れのせん断による機械的劣化が原因であると予想していたが、DR剤の調製方法に問題があることがわかり、対策を講じることができた。DR効果は採熱管の両末端の圧力差から求め、おおむね20%の圧力損失の低下効果が確認できた。また、一般家庭レベルの地中熱利用システムに対し、15~20%の省エネ効果があることが試算された。これらの結果は、本システムの有効性と長期運転に対する有効性を示せた点で意義のあるものである。一方、伝熱に関するデータの取得とブラインの検討は、上記三つの配管系が地中ではなく地上に露出しており、温度制御ができなかったため、着手することができなかった。 コロナ問題は当面継続することが予想されたため、近県で地中熱利用の試験が行えるフィールドを探索したところ、広島県三次市に地下100 mまで埋設した配管系(ミサワ環境技術㈱保有)をお借りできることとなった。令和2年度に実施できなかった項目と実配管を用いた本システムの総合評価が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、大学の実験室での装置で得られたDR効果に関する基礎データをもとに、千葉県の地中熱利用システムの試験設備による実証試験を行い、その成果を学会発表することができた。 2年目は新型コロナウイルスの問題で、当初計画していた千葉県の地中熱利用システムの設備での試験は全くできなかった。これに対し、研究室の採熱管循環系を拡張した装置で、実験を進めた。本装置で可能な実験については、定量的なデータが取得でき、本システムの有効性が裏付けられた。この成果を学会発表することができた。さらに、初年度で問題となったDR剤の劣化について、調製方法に原因があることを突き止め、対策を講じることができた。このことで、本技術の実用化への信頼性が高まったと言える。 一方、伝熱に関する実験、ブラインの実験は実施できなかった。昨年度の計画で、循環水の温度制御を恒温設備で行うことなどを考えていたが、配管系の保有水量に見合う熱容量を供給するためには膨大な出費が必要となり、計画を断念した。一方、近県でフィールド試験を行える会社との連携を模索し、最終的に広島県三次市のミサワ環境技術㈱殿の地中熱配管系を借用するための手続きを進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ミサワ環境技術㈱殿の地中熱配管系の借用については、両者の決済は下りており、本年5月より当方が現地入りし、先方との実験打ち合わせに着手する予定である。本設備は口径30mmの配管を地下100mまで埋設したもので、地中熱利用システムのパイオニアであるミサワ環境技術㈱殿が、実際の地中熱利用の案件に対し、確認実験を行うために不定期に使用されているものである。今後、スケジュール調整しながら、山口大学からDR剤やブラインの他、必要な機材や測定器を持ち込み、実験を行う予定である。また、伝熱実験については、ミサワ環境技術㈱殿が試作された評価装置も現地にあり、DR剤を含んだ循環水についての評価を行う予定である。
新型コロナウイルスの問題で、実施できなかった2年目の課題を後ろ倒しで実施することになるうえ、今後のコロナウイルスの状況も不透明である。よって、本課題で達成しようとしている目的を完遂させるためには、期間延長をお願いする可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末から新型コロナウイルスの問題により、関東圏への出張が一度もできなくなり、千葉県にある地中熱利用システムの試験設備での実験が全くできなかった。よって、千葉県での実験の出張費と物品費は未使用である。これに対し、実験室の配管系拡張に使った物品は、校費を当てたため、科研費からの支出はない。 次年度使用額については、広島県の新しいフィールドで当初予定していた実験を実施するために使用する。研究のスピードを加速させるため、出張頻度や期間を多くする予定にしているが、コロナ問題の終息を見ながら進めていくことになり、場合によっては、本テーマの目標達成のため、期間延長も視野に入れて考えている。
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