研究課題/領域番号 |
19K05124
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
加藤 雅裕 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80274257)
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研究分担者 |
霜田 直宏 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (50712238)
杉山 茂 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (70175404)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パラジウム膜 / 水素高速拡散 / セラミックス系微粒子 / 耐久性向上 |
研究実績の概要 |
パラジウム(Pd)膜は水素を高選択的に透過することができるが、ハンドリングで優位な多孔質ステンレススチール(SUS)支持体上に、高選択性、高透過性、高耐久性のPd膜を成膜するには、以下の4点が求められる。1.Pd緻密膜の薄膜化、2.水素の高速拡散、3.SUS支持体を構成する金属のPd膜中への拡散の阻止、4.Pd層の耐久性向上。 本年度は、多孔質SUS支持体のもつ凹凸を平滑化する中間層として、セラミックス微粒子の中でも、様々な粒子径や粒子形状をもつ微粒子群が安価に入手可能なチタニア微粒子に注目した。採用したアナタース型とルチル型のチタニア微粒子は、それぞれ凝集体を形成するが、液性をアルカリ側に変化させることでいずれも分散性が向上し、粒度分布が大きく変化した。この粒度分布と支持体のもつ細孔径分布をマッチングすることで、最適なチタニア微粒子群を選定した。 結果、平均細孔径0.5マイクロメートルの多孔質SUS支持体へ、分散させていないアナタース型チタニアもしくは分散させたルチル型チタニアを導入したところ、いずれも3マイクロメートル以下のPd薄膜が形成できた。しかし、分散させていないアナタース型チタニアを導入したPd膜では、凝集体が膜の平滑性を低下させ、耐久性低下の要因となることがわかった。そこで、分散させていないアナタース型チタニア微粒子と分散させたアナタース型チタニアを積層した。その結果、特に、中間層上に形成された緻密なPd膜の耐久性向上に大きく寄与することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度セラミックス系中間層微粒子として採用したチタニア微粒子について、粒度分布を測定し、分散剤を用いない場合は凝集体が形成され、支持体細孔をそれらで埋めた場合、平滑面の形成に難があることがわかった。そこで、本研究で無電解めっき法によるPd膜形成に用いているアルカリ性溶液により、チタニアの分散性を向上させ、支持体細孔にマッチするチタニア微粒子群を得ることに成功した。 しかし、分散したアナタース型チタニア微粒子群は、吸引法で支持体細孔に導入すると、支持体細孔に比べ、その粒子径が小さくそのまま通り抜けてしまった。そこで、まず、大きな粒子径をもつアナタース型チタニア微粒子の凝集体を導入し、その後、分散させたアナタース型チタニア微粒子で凝集体間隙を埋めることで、支持体細孔が平滑化されることを見出した。その中間層上に形成されたPd膜は、計50時間の600℃での水素透過試験においても安定した水素透過性を示し、途中に与えたヘリウム雰囲気下での600℃から室温、室温から600℃という温度サイクルに対しても、水素透過性、選択性が維持された。 よって、アナタース型チタニア微粒子を中間層として導入することで、当初の目標を達成するPd膜が得られたことから、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、チタニア微粒子を中間層として導入することで、耐久性の高いPd膜が得られることを見出した。本研究では、実際の水素生成試験条件下において、高い水素純度ならびに高い水素回収率の達成を目指していることから、次年度は、試薬エタノールを原料として、水蒸気改質反応を実施し膜の実用性を試験する。 一方、新たなセラミックス系微粒子として、NaAゼオライトを採用する。これまでは支持体細孔に微粒子を緻密に充填することで細孔を完全に埋めて、平滑化をめざした。しかし、今回採用するNaAゼオライト粉末はその粒子径が細孔に比べ十分大きく、細孔にはほぼ侵入しない。よって、イメージとしては細孔に蓋をすることで平滑化をめざす。なお、本研究では、NaAゼオライトの脱落防止にアルミナコートが効果を発揮することを期待している。これらの処理の結果、支持体細孔には大きな水素の拡散経路が残り、水素の高速拡散を実現することが可能と考える。 以上より、次年度は、チタニア微粒子を導入したPd膜の水素生成試験と、新たな着想に基いてNaAゼオライトを中間層して導入したPd膜の成膜にチャレンジする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で参加を予定していた学会が中止になったため、旅費ならびに学会の参加費が支出できず、次年度使用額が生じた。次年度も引き続き新型コロナウイルスの影響が続くことが予想されるため、次年度使用額は、膜形成や反応試験で使用する触媒調製に用いる試薬の購入に充てる。翌年度分として請求した助成金で購入予定の備品であるガスクロマトグラフ用のデータ処理装置を用いて、本研究の手法で形成したパラジウム膜を搭載した膜型反応器を用いた水素生成試験を推進する予定である。
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