研究実績の概要 |
近年価格が高騰しているレアメタルにPt, Pd, Rhのような白金族金属やレアアースのひとつスカンジウムScがある。本研究課題では、高効率分離を行う新しい分離媒体およびシステムを開発しこれらレアメタルの分離精製をモデルケースとして、その性能を検証した。 抽出剤として、ホスホニウム型のイオン液体に着目し、カチオンをトリオクチルドデシルホスホニウム(P88812)として、Cl-、Br-、Tf2N-など5種類のアニオンを組み合わせたイオン液体を合成し、物性や金属の抽出性能を検討した。これらのイオン液体は、室温で液体である。特定の金属に強い親和性を有するイオン液体は抽出剤無しでそのまま抽出溶媒として利用可能である。そのひとつP88812Clを用いてPt, Pd,およびRhの分離精製を行った。この3金属の用途は大半が自動車廃ガス触媒であることから、廃触媒からの実浸出液に対して抽出溶媒として適用した結果、各金属を連続的に抽出、単離することに成功した。さらにこのイオン液体を分離膜の金属キャリアとして用いることにより PdとRhおよび最も難しいPtとPdの分離に成功した。溶媒抽出の抽出と逆抽出を同時に行う膜分離は、抽出剤を薄膜化することによりその使用量を低減する。この膜によりRhの膜透過にも初めて成功した。さらに、同じ原理で分子設計した疎水性の高いアミド酸型抽出剤によりこれまで分離回収が難しかったScの高効率分離に成功した。これら分離膜はポリマーに均一にキャリアを固定化した自立膜である。疎水性の高いキャリアの使用により安定な膜分離システムの構築が可能となることを示した。
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