研究課題/領域番号 |
19K05127
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
甲斐 敬美 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (00177312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 拡散 / 非等モル / 細孔 / 分子拡散域 / Grahamの法則 / 多成分系 |
研究実績の概要 |
分子拡散域の細孔での等圧気相二成分相互拡散が非等モルであることは1833年に報告されていたが、その120年後に再認識され、Grahamの法則と呼ばれている。この現象は当時の常識外の現象で多くのメカニズムが提案されてきた。しかし、モデルのすべてが「等モル相互拡散係数」を使っており、前提条件や導出過程に問題がある。その中のDusty Gas Model (DGM)は現在では多成分系拡散にまで拡張されて利用されている。申請者は拡散現象を分子運動による移動とそれによる圧力勾配で生じる粘性流にブレイクダウンしたモデルを構築した。 本研究では、このモデルを多成分拡散に拡張する。まず、等圧拡散実験によりモデルの妥当性を検証した。100ミクロンよりも大きな粒子の充てん層でも非等モル拡散が起こることを実験および提案したモデルによって確認した。また、DGMでも説明できるが、このような広い空間では起こらないクヌッセン拡散を前提としている点で現象を正しく反映していない。一般的にクヌッセン拡散の影響はBosanquetの式で考慮され、これは拡散が分子拡散とクヌッセン拡散の直列で進行することを意味し、細孔径が大きくなると分子拡散が律速となり、クヌッセン拡散の寄与度は小さくなる。DGMではクヌッセン拡散と分子拡散が並列に起こる数学的表現となっているため、細孔が大きくなってもクヌッセン拡散の項が優勢になって非等モル相互拡散となっているだけであることを明らかにした。 また、提案したモデルで定容系での3成分拡散のシミュレーションを行った。Duncanらが1962年に報告したキャピラリーを通した3成分拡散における両端の2つのバルブ内のガス組成の時間変化を合理的に説明できた。また、キャピラリー径は2.08 mmであったので、非等モル拡散による圧力勾配は瞬時に解消され、バルブ内の圧力変化はなかったことも推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の1年目と2年目の検討課題の順番を変えて実施した。実験装置のシステムも変更したが、等圧系で検討できる項目については実験で確認できた。また、細孔部分にキャピラリーを使用したが、数百本をバンドルしても拡散面積を十分に大きくできず拡散の時間が日単位となり実験に支障がでることが分かった。これは当初の計画で懸念していた部分であり、代替案として粒径分布が極めて狭いガラス微粒子の充てん層を利用することとした。また、入れ替えで次年度に検討することとなった定容系においては圧力変化のみを測定する予定であったが、今年度の検討においてガス組成の測定もできるシステムに変更できることが分かったため、次年度の装置には改良を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は定容系のシステムでの実験を行うが、当初は3年目で実施する予定であった3成分相互拡散の実験まで視野に入れる予定である。使用するガスは水素/窒素/二酸化炭素である。実験は充てん層を拡散セルとして用いる。充てん層の一端は定容の空間を設け第一ガスを充てんし、他方は第二ガスでスウィープする。定容の空間はガスタイトシリンジで構成し、一定時間経過後にガスクロによってガス組成の分析を行う。また、シリンジ内の圧力も微差圧計によって測定する。得られたガス組成と圧力の実験値をモデルによるこれらの計算値と比較することによって、本研究で提案しているモデルが多成分系のガス拡散に適用できることを検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な消耗品のうち372円で購入できるものがなかった。次年度はこの残額を合わせて物品購入にあてる。
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