研究課題/領域番号 |
19K05128
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
野村 幹弘 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50308194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゼオライト膜 / 後処理 / 二酸化炭素透過 / アルコキシド |
研究実績の概要 |
Na型MOR膜をAg型、K型、Cs型にイオン交換した。この膜の評価を窒素透過の活性化エネルギーで評価した。交換したイオン径が大きくなるほど、活性化エネルギーが大きくなり、カチオン種による有効細孔径が減少したと考えられる。二酸化炭素透過率は、どの温度においても水素を基準としてKnudsen拡散から予想した透過率よりも実測透過率は減少し、降温による透過率の減少も大きかった。特に50℃では、Knudsen拡散より算出した二酸化炭素透過率が1.2×10-9 mol m-2 s-1 Pa-1と予想値より約1/8となった。いずれのイオン交換処理膜においても二酸化炭素透過率は特に小さく、MORへの二酸化炭素吸着の可能性が示唆された。大きな変化が観察されたので、本年度は、本項目を中心に検討した。イオン交換処理MOR膜を用いたメタン/二酸化炭素混合透過試験では、Na型MOR膜では50℃、においてメタン透過率2.6×10-8 mol m-2 s-1 Pa-1、二酸化炭素/CH4分離係数1.22であった。混合系での分離係数は単成分系で得られた透過率比より減少した。K型もNa型と同様に、分子径の小さいメタンが優先的に透過した。そこで、四重極系質量分析計を用いて、二酸化炭素脱離エネルギーをメタン/二酸化炭素混合透過試験より調査した。二酸化炭素のみ透過を停止した時点から、メタン透過量が二酸化炭素供給前の1/2の強度になる時間を半減期t1/2として、アレニウスプロットより二酸化炭素脱離エネルギーを算出した。Na型MOR膜の二酸化炭素脱離エネルギーは5.4 kJ/molに対し、Cs型は9.3 kJ/molであった。Cs型ではCs+と吸着水により有効細孔径が狭まり、二酸化炭素脱離エネルギーがNa型の1.7倍となったと考える。以上、イオン交換による二酸化炭素透過を、吸着性、拡散性で説明できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、MORゼオライト膜の二酸化炭素透過が、イオン交換により受ける影響を明確にした。特に、ゼオライトへの二酸化炭素吸着がゼオライト内での拡散に及ぼす影響が大きいことを見出した。さらに、イオン交換にてCs型など、カチオンサイズの大きなイオンを導入した場合、吸着性と合わせて、拡散性も抑制させることがわかった。これらの結果を温度依存性と合わせてこうさつすることで、ゼオライト中の二酸化炭素の移動を、吸着性、拡散性、そしてゼオライト内に存在する吸着水との関係を整理した。この様に3つの要因があり、不明瞭だったゼオライト中の二酸化炭素の移動が議論できるようになり、十分、研究が進捗したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られたゼオライト中の移動の影響をベースに、アルコキシド後処理を行うことで、二酸化炭素分離性の更なる向上を目指す。本年度の成果より、二酸化炭素吸着性およゼオライトの吸着水の影響が大きいことがわかった。そこで、後処理においても、親水的アルコキシド(例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、疎水的アルコキシド(例えば、3, 3, 3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)なども視野に入れて検討を進めることとする。まずは、各種ガスの単成分透過試験を行い、膜の基礎性能を確認し、混合系の評価を行う予定である。
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