研究課題/領域番号 |
19K05128
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
野村 幹弘 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50308194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MORゼオライト膜 / 3-アミノプロピルトリメトキシシラン / トリフルオロプロピルトリメトキシシラン / 後処理 / 親水性 / 疎水性 |
研究実績の概要 |
本年度は、計画通りMORゼオライト膜の後処理を検討した。まず、後処理の影響を明確にするために、2種の性質の異なるアルコキシド(3-アミノプロピルトリメトキシシラン (APrTMOS) および3, 3, 3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン (TFPrTMOS))を用い、透過性能に及ぼす影響を検討した。APrTMOSは親水的、TFPrTMOSは疎水的なので、新疎水性をチェックするために、水/イソプロピルアルコール(IPA)の透過にて評価した。まず、APrTMOS処理の処理濃度の影響を検討した。APrTMOS濃度が0.03~0.30 mol mol-1の時、水分離係数が780から19000に増加した。処理前後で、水透過率は6.4 × 10-9 mol m-2 s-1 Pa-1でほぼ一定であった。想定通り、ゼオライトの細孔を閉塞させずに、表面状態を処理できたと言える。しかし、APrTMOS濃度を3 mol mol-1と上昇させた場合、水透過率が400%上昇し、膜の破壊が起きたと思われる。次に、0.03 mol mol-1にて、TFPrTMOS処理を行った。APrTMOS処理と異なり、水透過率が9.9 × 10-9 mol m-2 s-1 Pa-1から6.1 × 10-9 mol m-2 s-1 Pa-1にわずかに減少した。水透過率が減少したことより、膜の破壊など大きな膜構造の変化は起こっていない。一方、IPA透過率は7.5 × 10-13 mol m-2 s-1 Pa-1から6.7 × 10-11 mol m-2 s-1 Pa-1と90倍ほど増加した。そして、TFPrTMOS処理濃度の増加と共にIPA透過率が増加したことから、膜表面が疎水的になりIPAが選択的に透過できるようになったと推察する。以上、APrTMOS処理、およびTFPrTMOS処理により、MORゼオライト膜の後処理が可能であることがわかった。特にアルコキシドの置換基は重要であり、親水性、疎水性の制御が可能であることを示したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、MORゼオライト膜の後処理の効果について注力した。処理剤としてアルコキシドである3-アミノプロピルトリメトキシシラン (APrTMOS)および3, 3, 3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(TFPrTMOS)を用いることで、MORゼオライト膜の後処理が可能であることがわかった。特にAPrTMOS処理では、置換基にアルカリ性を示すアミノ基をもっている。子のアミノ基の効果が、水の透過にポジティブな結果を示したことにより、二酸化炭素の分離効果にも期待ができる。そのため、方向性を微調整し、APrTMOS処理による二酸化炭素分離の検討を進めることとする。また、TFPrTMOS処理では、MORゼオライト中を拡散しにくいと考えられたイソプロピルアルコールの透過が確認された。これより、多結晶構造であるMORゼオライト膜の結晶間隙の透過が推測できる。そのため、二酸化炭素分離においてもMORゼオライト膜の結晶間隙を制御することで、透過率の向上が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度、後処理の成果が出た3-アミノプロピルトリメトキシシラン (APrTMOS)を用いた後処理に注力する。親水的かつ塩基性置換基であるアミノ基の効果を利用した二酸化炭素分離膜の開発を進める。さらに、透過性の向上のために、MOR膜のアルカリ処理なども検討する。アルカリ処理によりゼオライトにはnmレベルの細孔が形成されると考えられる。そして、この細孔を後処理で閉塞させることにより、目的の物質に親和性の高い貫通孔が得られると考えられる。
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