研究課題/領域番号 |
19K05129
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
河府 賢治 日本大学, 理工学部, 准教授 (10424748)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波振動 / 立方体変形 / 音響流 / 音響透過係数 / 摩擦低減 |
研究実績の概要 |
立方体を超音波振動板上に置き,立方体の変形量をレーザードップラー振動計を用いて測定した。その結果,次の知見を得ることができた。1)印加する電圧の周波数を超音波振動板および立方体の共振周波数に合わせることにより,立方体の表面が一様に振動するピストンモードとなる。また,印加する電圧と同様に時間に対して正弦波振動する。2)立方体のヤング率が小さいほど,また音響透過係数が大きいほど振動振幅が大きくなる。さらに振動板サイズにより変形量が変わり,振動板振幅が同一でも立方体変形量は異なる。なお印加する電流に比例して,立方体および振動板の振幅が大きくなる。 また,立方体の表面粗さ,立方体の温度上昇による摩擦低減効果への影響を調べ,ほぼないことを明らかにした。さらに,振動板と反射板間の音響流による粒子-壁面間の摩擦低減効果の研究も進め,可視化実験に向けて準備をした。その結果,音響流の可視化を行うために使用するアクリル容器サイズが250mm程度必要であることを音響シミュレーションにより明らかにした。さらに,アクリル容器の壁面に吸音材を用いることで,壁面における音波反射を抑えることができ,振動板と反射板間の音圧分布が開空間と同じとなることも実験的に示すことができた。 また,機械的振動板上の粒子挙動を調べるために,高周波数で単純な上下振動を作り出す方法を模索した。超音波振動板上にアクリル及びアルミ板をサンドイッチした薄型の板を置き,超音波振動によりこの板を浮遊させることに成功したが,浮遊板表面が音波によりたわみ変形してしまい,単純な上下振動とならず,この手法は用いることができないことが分かった。代わりとして,コイルと磁石を用いた方法を試み,ピストンモードで板を上下振動させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のとおり,超音波振動による立方体変形量を測定し,摩擦低減効果との相関関係があることが分かった。しかし,この手法の前に行った2019年度に確立した方法では,再現性が得られないことが判明し,実験方法の見直しを行うことになってしまった。実験方法の確立に時間を要したため,周波数は20.5kHzの一種類のみしか立方体変形を測定できず,さらに当初予定していた種類の材料やサイズでの変形量測定が実施できなかった。また,実験方法を見直していく過程で,変形以外の影響を調べる必要性が生じ,超音波印加による立方体の温度変化,立方体の表面粗さの影響など予定になかった実験を追加することとなった。さらに,これらと平行して超音波振動により板を浮遊させ,単なる上下振動する板上の粒子挙動と超音波振動板上の粒子挙動の相違を調べる実験も試みた。これは,音響透過係数による摩擦低減効果への影響を調べる実験であるが,浮遊板自体がたわみ変形することが判明し,別手法を模索した。そのため,予定通りに研究が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は音響流の可視化を行い,その後振動板上の粒子に対して同じ流速の風を与える実験を行う。既に平成27~29年度の科学研究費助成により実施された研究(課題番号15K18258)において得られた音圧による粒子-壁面間の摩擦低減効果と同振動条件下で音響流を調べる。この流速を粒子に与え,粒子が動くかを確認する。これで粒子が動くようであれば,音圧分布ではなく,音響流が粒子-壁面間の摩擦低減に大きく影響していることを証明することとなる。 さらに,機械振動する板と超音波振動する板上の粒子挙動差を実験により明らかにする。具体的には,両板上に散布された粒子挙動を高速度カメラおよびPTVにより分析し,比較する。これにより,単純な上下振動だけでなく,振動エネルギー透過有無による摩擦低減への影響を明らかにすることができ,その結果,音響透過係数による粒子ハンドリングへの影響度を示すことになる。 また,2020年度に実施できなかった条件での立方体変形量の測定を進め,振動周波数,立方体材料およびサイズ,振動板サイズによる変形差を示す。これにより,立方体変形による摩擦低減効果への影響度を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
立方体変形の測定実験で用いる試料を製作することとなったが,この製作費が当初予定していた金額から少し異なった。そのため,使用額に相違が生じた。この費用を2021年度に当初より予定している流量計などの装置購入に充てる。
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