高濃度スラリーの粘度を低減する方法の1つとして微小粒子を添加する方法がある。本研究では,相互作用力や接触状態を議論しやすくするため,球形かつ比較的粒子径の揃った粒子を用いて,微小粒子添加条件,液体条件,スラリー調整条件を系統的に変化させて粘度測定を行うことにより,微小粒子添加時のスラリー粘度低減効果の主要因とそのメカニズムを検討した。 本年度は,スラリー分散媒の種類が粘度低減効果に及ぼす影響の実験による検討と,粘度低減効果メカニズムのシミュレーションによる検討を主に行った。まず,実験による検討おいては,スラリーの液体として蒸留水,エタノール,ブタノール,アセトニトリルを用い,粒子には比較的粒子径の揃った球形シリカ(主粒子径は2.5μm,添加微小粒子径は0.5μm)を用いた。各液体に主粒子50 vol%,微小粒子1 vol%の割合で調整したスラリーの粘度をせん断速度割合50-700 1/sの範囲で調べたところ,全ての液体において粘度低減効果が生じることが確認できた。また,各液体でのせん断速度割合100 1/sにおける微小粒子添加による粘度低減量を比較したところ,低減量が小さい順に「蒸留水<ブタノール<エタノール<アセトニトリル」となった。各液体中での主粒子と微小粒子の粒子径分布を測定した結果,大きな粘度低減量を得るには,適度な微小粒子の凝集体を形成することが有用であることが示唆された。また,シミュレーションによる検討においては,上記の実験と同粒子径の主粒子と微小粒子を様々な配置で固定した粒子充填層を形成し,そこへ所定の速度で蒸留水を流入出させた際の流体挙動の特徴を調べた。その結果,微小粒子が存在することにより微小粒子周辺での流体挙動が複雑になりやすいことが示され,これによりスラリー中での粒子同士の接近が抑制され,粘度低減効果が生じる可能性が示唆された。
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