イオン液体は常温近傍以下に融点を持つ液体の塩で、不揮発性、難燃性、優れた熱化学的安定性などの特徴を有し、二次電池の電解液を始めとして化学反応や分離プロセスの媒体としての応用研究が進められている。本研究では、イオン液体を電気化学的CO2還元反応(ECR)の電解液や電子移動プロモーターとして利用して、基盤技術の構築を通して高効率のECRの開発を目指した。 昨年度製作した高圧電解セル(容量約30 cm3)を用いて、高圧条件下で電気化学的CO2還元実験を行った。作用電極はAu平板電極(10 mm X 10 mm)、参照電極はAg線からなる疑似電極、対極はコイル状のPt線を用いた。1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド([emim][Tf2N])やジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド([deme][Tf2N])を電解液として用い、高圧電解セルに約10 cm3を量り取った。それらのイオン液体に、1.1 MPaでCO2を飽和吸収させた後、サイクリックボルタンメトリーによりCO2の還元電流を確認した。[emim][Tf2N]では-2.3 V付近からCO2還元電流は立ち上がり、[deme][Tf2N]ではそれよりも少し正の-2.0 V前後の電位から還元電流の立ち上がりが観測された。-2.5 Vで定電位電解を所定時間行ったところ、電解セル内の圧力は電解に伴い僅かに上昇した。電解セルからガスクロマトグラフィーまでオンラインで定電位電解後の生成ガスを送り込んで分析したところ、どちらのイオン液体においてもCOとH2の生成が確認された。COの生成量から見た電解効率は、[emim][Tf2N]よりも[deme][Tf2N]の方が優れることが分かった。
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