研究課題/領域番号 |
19K05138
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
長谷川 馨 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (50644944)
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研究分担者 |
伊原 学 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (90270884)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固体酸化物燃料電池 / カーボンナノチューブ / 固体電解質 / 酸素活量 / 炭素材料 |
研究実績の概要 |
本研究は、固体酸化物燃料電池(SOFC)燃料極に対し、炭素、特にカーボンナノチューブ(CNT)を機能材料として導入する技術を開発する。SOFCは高温電気化学により多様な反応を高効率化するが、特に炭素を伴う反応では金属Ni上の炭素析出と酸化劣化が長期運転に対し課題となる。一方、炭素材料、CNTは特異な物性から応用が期待されるが、SOFCは製造工程、発電ともに高温なためCNTの導入、維持には革新的手法が必須である。応募者はCNT成長とSOFCの反応場の類似に着目し、セル内で直接合成しそのまま利用する“CNT合成技術”の導入法を考案した。本手法は、O2-を伝導し金属に酸素を供給する機能を持つ酸化物上にCNTをどう成長させるかが課題となる。SOFCが電極電位と等価である酸素活量によって酸化還元を能動的に制御できることを用い、高温電気化学の視点を導入しCNT成長促進を図る。 これまで、イオン伝導性酸化物であるY安定化ZrOx(YSZ)やGdドープCeOx(GDC)上にFeやNiの金属ナノ粒子を担持した燃料極を用いたセルを作成し、セル内でCNTの直接合成を試みた。CNTの成長は確認できた一方、Al2O3等の通常用いられる担体上と同等の成長とはならなかった。そこで着目したのが、SOFCにおいて電極電位で能動的に制御できる酸素活量と、それによって変化する三相界面上の酸素被覆率である。電極電位を変化させ酸素活量を低減することでCNT成長を阻害する酸素の被覆率を制御できるのではないかと考えた。 2019年は、セルに対して電圧を印加することで、燃料極表面の酸素活量を変化させ、炭素源を供給した際のCNT成長に変化が起こるかを検討した。その結果、電極電位によってCNTの成長量が大きく変化することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、イオン伝導性酸化物であるY安定化ZrOx(YSZ)やGdドープCeOx(GDC)上にFeやNiの金属ナノ粒子を担持した燃料極を用いたセルを作成し、セル内でCNTの直接合成を試みた。CNTの成長は確認できた一方、Al2O3等の通常用いられる担体上と同等の成長とはならなかった。そこで着目したのが、SOFCにおいて電極電位で能動的に制御できる酸素活量である。電極電位を変化させ酸素活量を低減することでCNT成長を阻害する可能性がある酸素被覆率を制御できるのではないかと考えた。SOFC分野において、空気極参照極と燃料極作用極間でのオーミックフリーの電位であるアノード電位によって、燃料極の酸素活量が電気化学的に制御でき、それによって三相界面における酸素被覆率が変化することが示されている。 2019年は、セルに対して電圧を印加することで、燃料極表面の酸素活量を変化させ、炭素源を供給した際のCNT成長に変化が起こるかを検討した。従来のSOFC発電評価装置を用いて、電極間の電位を測定しながらCNTを成長させる手法を構築した。セル電圧をOCV(1.3V程度)から1.75, 2.2, 2.6Vと変化させてCNT成長を行った結果、CNT成長が大きく促進されることを確認した。ラマンスペクトル測定やSEM観察によって、成長するCNTの量、結晶性ともに大きく増大することを確認した。
以上から、本年度の研究に関して「おおむね順調に進展している」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
1.酸素活量の定量:セルへの電圧印加によって、CNT成長の促進が行われるという、本研究のコンセプトの妥当性が定性的に示唆される結果が得られた。一方、電極間に想定外の電流が流れるなど、酸素活量の定量性に課題が残る。CNT成長の環境を再検討し、定量的に酸素活量を制御した上で、SOFC反応モデルの適用により酸素被覆率とCNT成長の関係を明らかにする。 2. CNT成長による、SOFC特性への効果の評価: これまでと比較して多くのCNT成長が見られたため、「CNTを成長し、そのまま発電する」本提案の実証を行い、CNTのSOFC燃料極材料としての特性を評価する。成長するCNTの量や、直径や長さといった特性が、電極特性に与える影響を評価する。 3. 材料の違い等に対する比較検討: 2019年度は主にGDC上の成長を試みた。これは、電圧を印加しなくてもある程度のCNT成長が見られた酸化物であったためである。2020年度は、より汎用的に用いられ、電子伝導性を示さないため酸素活量の厳密な定量が可能であるYSZ上の成長を試みる。それによって、酸素活量と酸素被覆率、CNT成長の関係を明らかにする。そのことで、SOFCとしての利用だけでなく、CNT成長機構に対するフィードバックも目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額ながら、使用用途において端数が生じ、特に3月のコロナウィルスなどの影響により調整に不都合が生じた。 次年度も引き続き行っていく研究の中で利用する。
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