本研究は、固体酸化物燃料電池(SOFC)燃料極に対し、炭素、特にカーボンナノチューブ(CNT)を機能材料として導入する技術を開発する。SOFCは高温電気化学により多様な反応を高効率化するが、特に炭素を伴う反応では金属Ni上の炭素析出と酸化劣化が長期運転に対し課題となる。一方、炭素材料、CNTは特異な物性から応用が期待されるが、SOFCは製造工程、発電ともに高温なためCNTの導入、維持には革新的手法が必須である。応募者はCNT成長とSOFCの反応場の類似に着目し、セル内で直接合成しそのまま利用する“CNT合成技術”の導入法を考案した。SOFCが電極電位と等価である酸素活量によって酸化還元を能動的に制御できることを用い、高温電気化学の視点を導入しCNT成長促進を図る。 これまで、セル内、イオン伝導性酸化物であるY安定化ZrOx(YSZ)やGdドープCeOx(GDC)上にCNTの直接合成を試みたが、Al2O3等の通常用いられる担体上と同等の成長とはならなかった。そこで着目したのが、SOFCにおいて電極電位で能動的に制御できる酸素活量と、それによって変化する三相界面上の酸素被覆率である。電極電位を変化させ酸素活量を低減することでCNT成長を阻害する酸素の被覆率を制御できるのではないかと考えた。 2020年までに、セルに対して電圧を印加することで、燃料極表面の酸素活量を変化させ、炭素源を供給した際のCNT成長が大きく変化することを明らかにした。一方、一定以上の電圧を印加すると、電解質酸化物の電子伝導によって電流が流れ酸素活量が規定できなくなることが分かり、電子伝導が発現しない電圧範囲でCNT成長への影響を調べた。 2021年には、Feナノ粒子を用いると、電圧印可の有無によらず十分な成長が見られなかったことから、Niナノ粒子を用いて電圧の影響と、CNT成長中の物質移動の影響を検討した。
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