研究課題/領域番号 |
19K05142
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
内海 裕一 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (80326298)
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研究分担者 |
岸原 充佳 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (50336905)
山口 明啓 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 准教授 (70423035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロ波 / マイクロ波加熱 / microfluidics / マイクロ化学システム / コンビナトリアル化学 / 有機合成 / 導波路 / 金属錯体 |
研究実績の概要 |
逐次的な単位化学操作を実現するマイクロ化学システム(チップ)の研究開発が盛んである。これは反応空間をマイクロ化することで反応分子の拡散時間を短くして反応速度を著しく向上でき、複 数の反応ステップをコンビナトリアルに進めることができる。このマイクロ化学システムの リアクタ部分をマイクロ波によって個別かつ局所的に高速加熱できれば、マイクロ波のコン ビナトリアル化学への展開がオンチップで可能となる。今年度はこのシステムの高度化のために以下の成果を得た。 ①多段階反応ステップを有するマイクロ波化学システムの設計 マイクロ波加熱による化学反応に混合、乾固、分離、濃縮などの複数の単位化学操作を組み合わせた多段階反応ステップの化学チップの設計を行った。構造は光学的なモニタリングを可能とするために、導波路の上下平行板に透明ITO膜基板を用い、反応箇所への投入すべきエネルギーを制御するために共振器構造を検討した。この結果、二つの複数の流路中の反応箇所を異なる温度で同時に加熱可能なポスト壁構造を設計する見通しを得た。さらに電磁場解析を用いた設計結果では、複数の共振キャビティを使うことにより単一のマイクロチャンネルの異なる部位を異なる温度で同時に加熱可能なことを理論的に見い出した。 ②マイクロ波化学チップの反応効率の促進 加熱温度の向上のためにマイクロ波(24.15GHz)が照射される部分(アプリケーター)に定在派を生成した共振器型シングルモードにしてエネルギー密度をアップする構成について検討を行った。また、マイクロチャンネルのみにマイクロ波エネルギーを均一集中させるための共振器構造や最適なポスト壁の幅、高さ、形状等の検討を開始しパラメータの最適領域の把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多段階反応ステップを有するマイクロ波化学システムの設計については、導波路の上下平行板に透明ITO膜基板の光学特性の評価結果が良好であり、実際の適用が可能な見通しが得られたことが大きかった。導波路の上下平行板に透明ITO膜基板を用いることによって実際の流体の場所と加熱の箇所の相対位置が正確に分かるので加熱の均一化や効率化が図れる。さらに電磁解析プログラムを用いた共振キャビティの設計が良好に進み、同一の導波路上に複数の共振キャビティの設定が出来ることが理論的に分かったことも予定通りの進捗が得られた基本的な要因となった。またマイクロ波(24.15GHz)が照射されるアプリケーターに定在派を生成する共振器型シングルモードの導波路の具体的な構造について設計を開始した。ここではよりエネルギー密度を向上させる構造を形成することが肝要になる。
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今後の研究の推進方策 |
1)集積化マイクロ波化学システムの設計と作製 本年度設計開始した集積化マイクロ波加熱化学システムの作製を試みる。当初は機械加工によってシステムのプロトタイプの要素構造を作製し、評価を行う。これを繰り返し構造の最適化を行った後、最終的には申請者らの発明による放射光を用いたPTFEの高精度微細加工技術を用いて加工精度を数ミクロンレベルにアップする。 2)マイクロ波反応のモニタリング手法の開発 マイクロ波化学反応の特長として、顕著な促進 選択制の向上 無触媒化 無溶媒化などが挙げられる。そのメカニズムについては急速な分子内部加熱によるスーパーヒーティング、極性溶媒や極性基質あるいは極性の反応中間体によるマイクロ波の選択的吸収等々が考えられているがメカニズムは未解明の部分が多い。本システムは導波路の上下並行板に光学的に透明なITO電極を用いることが可能となったため、光学的な手法を用いて反応のモニタリングの見通しが得られた。吸光度分光や発光分光などの具体的なモニタリング手法の選択とマイクロチャンネルに適用できるデバイスの設計・製作を行い、実際のマイクロ波反応のモニタリング手法の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大による在宅勤務等で実験を行う機会が減少し、改良システムの試作など実験が予定より遅れた部分があった。 来年度には複数のシステムの改良を並行で走らせるなどして実験の消耗品の利用を合理的に増やして計画を進める予定である。
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