研究課題/領域番号 |
19K05144
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
庄野 厚 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (20235716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スプレーノズル / 金属ニッケル粒子 / ヒドラジン還元法 / 過熱水蒸気 |
研究実績の概要 |
スプレー式混合システムを用いて単分散の金属ナノ粒子の連続合成システムの開発を目的に、本年度は①スプレー式混合システムによるニッケルナノ粒子の連続合成、②加熱元として過熱水蒸気供給システムの開発、および③スプレー式混合システムにおける噴霧特性の検討を行った。 ①のスプレー式混合システムによる金属ニッケルナノ粒子の連続合成においては、生成物の回収方法や噴霧圧等に対する合成粒子の粒径や組成を評価した。エチレングリコールを溶媒とした塩化ニッケルのヒドラジン還元法によるニッケルナノ粒子の合成を行い、生成物の同定、形態観察を行い、さらに操作条件の影響について検討した。得られた生成物は本実験の操作条件範囲内では金属Niのみであった。また、噴霧圧を大きくすると粒子径は小さくなるが収率は低くなり、逆に噴霧圧を小さくすると収率は高いが粒子径は大きくなり、これは噴霧により生成した液滴径の大きさが影響しているものと考えられ、液滴径の制御が粒子径の制御に繋がると考えられた。 ②の過熱水蒸気供給システムの構築は、金属前駆体から金属ナノ粒子の生成に必要な熱の供給とスプレー式混合システムの噴霧用気体として過熱水蒸気の適用を考えて構築した。加熱用ヒーターと供給水流量の設定等について検討を行い、空気によるスプレー噴霧時とほぼ同程度の圧力と流量で過熱水蒸気を噴霧することが可能であった。 ③Villermaux-Dushman反応によるスプレー式混合システムの混合特性を評価では、比較対象として2種類(Y字、T字)のマイクロチャネル、回分式攪拌槽における混合特性と比較した。スプレー式混合システムの混合特性は噴霧圧の増加とともに良好となり、マイクロチャネルの混合性能を上回ることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スプレー式混合システムによる金属ナノ微粒子の合成およびその加熱源としても過熱水蒸気供給システムに関してはほぼ予定通りの成果が得らえたと考えている。Villermaux-Dushman反応による混合特性の評価は、二種類の反応のうち片方の遅い反応で生成したヨウ素をヨウ化物イオンとし、その吸光度を定量することで混合特性を評価するものであるが、この吸光度が時間とともに変化することが分かった。そのため、吸光度の時間補正する方法を検討した。このため、温度等による混合特性の違いや、混合が装置のどの部位で主として起こっているかなどの詳細な検討までは至らなかった。今後、速度論的検討も含めてVillermaux-Dushman反応について詳細な検討が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
既に明らかになっている窒素を供給気体としたスプレー式混合システムによる金属ニッケル微粒子の合成条件を用い、加熱および噴霧用気体として過熱水蒸気を用いた反応系でニッケル微粒子の合成を検討する。種々の操作条件が、生成物ならびに生成物形状に及ぼす影響を明らかにする。また、分散・混合による反応を行わせたのちに連続的に反応液体を冷却し、反応を停止させる方法についても検討を行う。 Villermaux-Dushman反応については、より適切な反応条件を速度論的に検討し、化学種の濃度や液流量比などの条件が混合特性に及ぼす影響について明らかにする。さらに得られた知見をもとにスプレー式混合システムにおける混合特性について、装置の構造やスプレーノズルの種類等を変化させて混合特性についてより詳細に検討する予定である。十分迅速な混合特性の指標が得られれば、さらに伝熱特性についてヨウ素ーアセトン反応による解析の検討を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度後半に予定されていた学会の発表会がほとんど新型コロナウィルスの影響で中止され、旅費を請求することがなかった。また、反応による混合特性の評価が当初の予定より進まなかったために差額が生じた。 スプレーブレンドシステムによる金属微粒子の連続合成に関する研究もすすめるが、本年度に進展の遅かったVillermaux/Dushman反応の速度論的解析ならびにこの反応を利用した混合特性の解明を重点的に行う予定である。併せて、噴霧状態の観察による流れの状態の解析からも混合特性の検討を行う。また、混合特性に関する蓄積された知見をふまえて、ヨウ素ーアセトン反応による伝熱特性の評価にも発展させる予定である。
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