研究課題/領域番号 |
19K05147
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
小笠原 正剛 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (40431613)
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研究分担者 |
加藤 純雄 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (50233797)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Dion-Jacobson型層状ペロブスカイト / 有機無機複合体 / 塩基触媒 / 層間架橋体 |
研究実績の概要 |
無機種として用いる層状化合物が,有機無機複合体の塩基触媒活性に与える影響について明らかにするため,HCa2Nb3O10を基本組成としCaサイトにSrを置換したHCa2-xSrxNb3O10組成について検討したところ,Sr置換量に伴い有機種含有量が減少し塩基触媒活性も低下した。また,CaサイトにLa,NbサイトにTiを同時置換したHCa2-yLayNb3-yTiyO10を無機種とした結果,置換量y=1の層状化合物から得られた複合体が高い塩基触媒活性を示した。さらに,Laをイオン半径の小さいNdに置換したところ,Nd置換量増加に伴い格子体積の小さな層状化合物が得られたが,複合体の塩基触媒活性は向上しなかった。これらの結果より,Ca置換に比べてNb置換が塩基触媒活性向上に大きな影響を及ぼすことが分かった。 第四級ホスホニウムイオンを有機種とした幾つかの複合体について31P-MASNMR測定を行った結果,複合体中では出発原料として用いたホスホニウム塩とは異なるケミカルシフトを示した。一方,塩基触媒活性との明確な相関は見られなかったことから,詳細に検討するために固体NMRの測定条件の再検討や塩基触媒活性評価条件の最適化が必要であると考えている。 これまでに,有機種の長鎖アルキル基の炭素数によって塩基触媒活性が変化することが明らかになっている。一方,有機種は塩基点の形成因子あるとともに複合体の構造支持を担っているために,長鎖アルキル基の炭素数の変化はナノオーダーの長周期規則性の違いも生じさせている。塩基触媒活性向上因子解明の過程において,有機種が複合体に与える影響のひとつとして長周期規則性の重要性を検討するために,有機種を一部除去しても構造が崩れない層間架橋体に注目した。層間架橋体を無機種として再複合化処理を行ったところ,塩基点が形成されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Dion-Jacobson型層状ペロブスカイトHCa2Nb3O10の一部を置換した層状化合物を無機種として第四級オニウムイオンを有機種として層間にインターカレートし,その塩基触媒活性を評価した結果,Bサイトカチオンの置換が大きく影響している結果が得られた。これは,塩基点が有機種近傍の酸素であるためと考えられる。また,触媒活性向上には部分置換した固溶体の探索が有効なことも示唆された。 塩基触媒活性向上因子を明らかにするために行った固体NMR測定は,複合体間で違いが見られている状況ではあるが,評価条件の一部見直しや詳細な解析が必要であり検討を継続する。また,ナノオーダーのペロブスカイトシート構造の規則性に注目し,層間架橋体を調製し無機種としたところ新たな有機無機複合体を得ることが出来た。今後,Dion-Jacobson型層状ペロブスカイトを直接複合化処理しても有機種が挿入されないホスト-ゲストの組み合わせも検討する予定である。 以上より,実験の過程で新たな課題も見つかっているが,これまでの材料を応用した複合体も調製できており,今後の研究遂行に有用な知見が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,塩基触媒活性の制御を主軸とした検討を行った。これまでに,無機種(ホスト)と有機種(ゲスト)の組み合わせに因り塩基触媒活性が変化することが分かっており,特にBサイトの一部にTiを含む組成で触媒活性が向上したことから,この知見を活かして更なる組成探索を継続する。また,層間架橋体を無機種としても塩基触媒活性を有する有機無機複合体を調製できることが明らかになったので,長鎖アルキル基の炭素数や本数の異なる幾つかの有機種との複合化を行い,評価,考察することで塩基触媒活性向上因子の解明を目指す。さらに,層間架橋体は200 m2/g程度の比表面積を有することから,層間空間や比表面積を活かした高活性,高選択性の達成が出来ないか検討する。 初年度にも注力した酸塩基両特性の基礎的な評価に加え,応用的な触媒活性評価にも着手したいと考えている。これまでの検討から,有機無機複合体には弱い塩基点が形成されていると推定されることから,この点に注目した応用例を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
固体NMRの測定を慎重に行うべきデータが得られたので,試薬の購入を控えた。また,大学の研究設備の使用に制限もあり,研究計画の一部を見直すことも必要だったため,消耗品費が予定よりも少なくなった。オンラインで研究発表会等が行われたことや,県外への移動が難しい状況だったため旅費の使用が無かった。 次年度使用分に関しては,層状化合物を焼成するための電気炉発熱体や有機無機複合体調製に必要なガラス器具,得られた試料の分析に使用する機器用備品等の購入に充当する。また,触媒活性因子の解明のために新たな評価装置を構築することが見込まれることから,そのガラス器具の購入に使用する。
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