これまで得られた知見を活用し,有機種含有量の多い有機無機複合体を得ることを目的として,長鎖アルキル基を2つ有する第四級アンモニウムイオンを用いた検討を詳細に行った。その結果,同じアルキル鎖長を1つ有する第四級アンモニウムイオンを用いたときと比較し,等しい複合化条件において有機種量が多く酸量が少ない複合体を得た。この複合体は,脱アセタール化反応およびKnoevenagel反応の触媒としてそれぞれ機能したことから酸塩基両特性を有すると考えられる。加えて,両反応をone-potとし脱アセタール化で生成した生成物がKnoevenagel反応の基質になる連続反応試験を行ったところ,脱アセタール化単独よりも連続反応試験の方がアセタールの転化率が高くなった。この結果は,酸点と塩基点の共存により触媒機能が向上していることを示唆している。 また,塩基点形成因子となる有機種の選択肢を拡げることを目的とし,親水部を2つ有するビス第四級アンモニウムイオンを有機種とした検討を行ったところ,XRDによるHCa2Nb3O10の層間拡張の確認とCHN分析から有機種導入が認められ,さらにこの複合体はKnoevenagel反応を促進することが分かった。ビス第四級アンモニウムイオンは,これまで主に検討してきた親水基が1つ,長鎖アルキル基が1つの有機種とは異なる形態で層間に存在する可能性があり,今後詳細に検討することで酸塩基両特性を有する新たな複合体設計のための知見が得られると期待される。
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