研究課題/領域番号 |
19K05148
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
大柴 雄平 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (10708530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸-アルカリハイブリッド燃料電池 / 細孔フィリング薄膜 / 水挙動 / カーボンアロイ触媒 |
研究実績の概要 |
本研究提案では、燃料電池システムの極低白金化及び自己加湿を目指して、酸-アルカリハイブリッド燃料電池のシステム設計と水移動解析を行う。酸環境のアノードで白金量を減らし、アルカリ環境のカソードでは非白金系のカーボンアロイ触媒の利用により、燃料電池システム全体の白金使用量の効果的な低減を目指す。アニオン伝導膜は、アニオン伝導性高分子をプロトン伝導膜に薄く塗布することで作製する。プロトン伝導膜やアニオン交換膜における膜厚などの膜特性の変化が電池性能や水移動に与える影響を、実験・モデル計算の両面から明らかにするとともに、自己加湿を実現する、ハイブリッド燃料電池用電解質膜の設計指針獲得を目指す。 今年度は、カーボンアロイ触媒(FeCo-NCZ)の大量合成を行い、回転ディスク電極を用いてアルカリ溶液中での酸素還元反応(ORR)活性を測定した。FeCo-NCZは非白金触媒にも関わらず、開始電位が1.08 V、半波電位が0.89 Vと、これまでと同様に市販の白金担持カーボン触媒と同程度の高いORR活性を有することを確認した。また、FeCO-NCZ触媒の耐久性は、アルカリ溶液中の方が酸溶液中よりも高いことを明らかにした。合成したFeCO-NCZ触媒を用いて、酸-アルカリハイブリッド型燃料電池の発電に初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、燃料電池に利用するために、カソード触媒で用いるFeCo-NCZ触媒の大量合成を試み、作製した触媒はこれまで同様、市販の白金担持カーボン触媒と同程度の高いORR活性を示すことを確認した。また、この触媒は、アルカリ環境下で高い耐久性を有することを示した。さらには、非白金カーボンアロイ触媒を用いてハイブリッド型燃料電池の発電に初めて成功した。過電圧分離の結果、現状ではカソードの活性化過電圧が高いことが明らかとなったため、今後、カーボンアロイカソード触媒層や酸/アルカリ接合界面の構造を検討し、電池システムの最適化を進めることで、低白金・高出力の酸-アルカリハイブリッド燃料電池を目指す。以上の進展はおおむね当初の計画に沿ったものであり、今後、研究を進めてくうえで重要な、ハイブリッド燃料電池システムの最適化指針が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、アノードのPt/C触媒量低減の検討やカソードのFeCo-NCZの触媒量や、触媒とアイオノマーの比率を変化させてMEAを作製し、集束イオンビーム走査電子顕微鏡による触媒層の断面観察や電池性能評価、電気化学解析により電池システムの最適化を行う。また、プロトン伝導膜の膜厚アニオン伝導性高分子層の厚みを変化させることで、電解質膜が電池性能に与える影響を評価する。 令和3年度は、構築したハイブリッド燃料電池システムを用いて、水移動解析を行う。ハイブリッド燃料電池の水移動モデルを構築するし、プロトン伝導膜自身やアニオン伝導膜の厚みを変化させた場合に、出口露点を測定して水挙動を定量的に評価することで、膜特性の変化が水挙動に与える影響を明らかにする。そして、実験やモデル計算の両面から、自己加湿を実現する、ハイブリッド燃料電池用電解質膜の設計指針を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度投稿予定の英語論文の校正分を見越していたが、必要なくなったため、次年度への繰り越しをした。この分は、次年度、英文校正や別刷り・カバー印刷代と併せて使用していく。
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