研究課題/領域番号 |
19K05149
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
谷池 俊明 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (50447687)
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研究分担者 |
THAKUR Ashutosh 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任助教 (80836833) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 協奏的触媒作用 / 機能集積 / 高分子鎖担持型触媒 / 精密設計 / オレフィン重合 |
研究実績の概要 |
相補的な特徴を有する固体触媒と分子触媒の概念融合は、触媒化学分野における夢の一つであり、オレフィン重合分野においては究極のテイラーメイドポリマーに至る可能性を秘めている。本研究の目的は、一次構造が精密規定された可溶性の高分子鎖担体に分子触媒を集積させた新規の概念融合型触媒を合成し、これを基盤として協奏的触媒作用や機能集積の系統的な制御を実証することである。昨年度は、単一の活性種(aryloxide含有ハーフチタノセン)を同一鎖内に規定数含む可溶性の高分子鎖担持型触媒の合成に成功し、エチレン重合における協奏的な活性向上作用を見出した。この成功を受け、今年度は機能集積を実現する以下の実験を実施した。 まずは、norbornene/2-aryloxonorbornene/4-bicyclo[2.2.1]hept-5-en-2-yl-salicylaldehydeの3元精密共重合を行い、2種類の配位基を同一鎖内に含有する高分子鎖担体を合成した。この担体をCp*TiMe3錯体と反応させることで、aryloxide含有ハーフチタノセンとphenoxylimine含有ハーフチタノセンという2種の活性構造を同一鎖内に規定数保持するタンデム型高分子鎖担持型触媒を得た。参照触媒として、aryloxide含有ハーフチタノセン、あるいは、phenoxylimine含有ハーフチタノセンのみを保持する高分子鎖担持型触媒も合成した。Al(iBu)3/Ph3CB(C6F5)4を活性化剤として用いたエチレン重合において、高分子鎖担持型触媒は対応する分子錯体と比較して高活性であり、より高分子量のポリエチレンを与えた。特に、タンデム型高分子鎖担持型触媒は、二峰性の分子量分布を持ち延性に優れた超高分子量ポリエチレンを与えることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度の目標は同一の高分子鎖内に2種の活性点構造を導入した「タンデム型高分子鎖担持型触媒の合成」と「機能集積の実証」であり、研究実績の概要で述べたように、どちらの目標も成功裏に完遂することができた。特に、2種類の活性構造を同一鎖内に有するタンデム型高分子鎖担持型触媒、2種類の活性構造を別々の高分子鎖に有する高分子鎖担持型触媒、2種類の分子錯体の混合物の3つを比較し、タンデム型高分子鎖担持型触媒の機能面での優位性を明確化することに成功した。タンデム型高分子鎖担持型触媒においては、ナノサイズのランダムコイル内で2種類の活性構造が協働した結果、分子量の異なるポリエチレンの均一な混合が可能となり、生成物の延性を向上させるものと想定された。2020年度の研究成果は、本研究が提案する高分子鎖担持型触媒が系統的な機能集積を実現する新機軸になり得ることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2021年度は、当初計画通り、ランダムコイルが活性構造の化学環境を形成する特徴に着目した触媒設計を行う。例えば、高分子鎖の主モノマーであるnorborneneに剛直なtetracyclododeceneを加え、主鎖の剛直性や溶解性が制御された高分子鎖担持型触媒を合成する。トルエン(良溶媒)/ヘプタン(貧溶媒)の混合溶媒を用い、高分子鎖の状態(形態・サイズ)とエチレン重合における協奏作用の対応を検討する。このように、高分子鎖の物理化学的な性状を通して触媒作用の制御を試みる。
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