昨年度までに水共存下でのエタノール転換反応について,ガリウム添加ジルコニウム固溶体触媒が723Kアセトン,イソブテン生成反応を促進することを見出しており,アセトアルデヒドから酢酸,アセトンを経てイソブテンが生成する反応経路,ガリウムイオンおよび共存する水分子の役割,触媒の固体塩基性質を明らかにしている.今年度はエタノール転換反応に対する添加元素種の検討,および水非共存下での活性試験を行った. 第四周期遷移元素による添加元素種スクリーニングを行ったところ,反応温度573 Kでは銅添加酸化ジルコニウム触媒の活性が他触媒より2倍以上高く,選択的に脱水素反応が進行した.水共存下ではアセトンが生成する過程で二酸化炭素が生成することから,以降の検討は水非共存下で行った. 高いアルコール脱水素活性を示すことを見出していた銅イオン添加酸化ジルコニウム触媒を用いたところ二酸化炭素は生成せず,アセトアルデヒドと酢酸エチルが主成分となる先行研究を再現する結果を得た.エタノールからの酢酸エチル直接合成反応はアセトアルデヒドを経由する逐次反応であると認識されている.銅イオン添加酸化ジルコニウムの触媒性能を酢酸エチル収率に加えて選択性の指標として酢酸エチル/(ブチルアルコール+ブチルアルデヒド類)の生成物比により評価したところ,生成物比は担体結晶相より異なっていた.この生成物選択性は添加量とは相関性はなく非晶質>正方晶(立方晶)系>単斜晶系であり,単斜晶系担体が最適であるとする先行研究とは異なることを見出した.活性試験前の触媒に含まれる銅種は二価であり,表面密度が高いとCuO結晶が存在する.活性試験後には単斜晶,正方晶担体上の銅種は金属へ大半が還元されるが,非晶質担体では約半分が二価種として残存していた.
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