研究実績の概要 |
本研究では①Aサイトへのアルカリ土類金属イオンを添加したペロブスカイト型酸化物触媒の調製法の確立,②金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の確立,③そのPM酸化触媒特性について調査することを目的としている. 今年度も研究項目①を継続し,シアノ錯体熱分解法を用いたAサイト置換ペロブスカイト型酸化物触媒の調製について研究を遂行した.A(NH4)[Fe(CN)6]・nH2O (A = アルカリ土類金属イオン)前駆体を焼成したところ,A = Mgではスピネル型MgFe2O4, Caではブラウンミレライト型Ca2Fe2O5,Sr, Baではペロブスカイト型SrFeO3, BaFeO3の各金属酸化物が生成することがわかった. 研究項目②の金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法について以下の研究を遂行した.種々の金属イオンをLa[Fe(CN)6]・nH2O前駆体に含浸担持し,M/LaFeO3 (M= Co,Ni,Cu, Pd)触媒の調製を試みた.全ての触媒において, LaFeO3のXRDパターンのみがピークシフトすることなく観測されたことから, 本法で金属を担持する場合, 用いた金属がLaFeO3に固溶することなく, 担体表面に分散担持できることがわかった. さらに研究項目③のPM燃焼試験をSrFeO3, Ca2Fe2O5, LaFeO3触媒を用いて実施したところ, SrFeO3とLaFeO3はほとんど活性に違いは見られなかったが,ブラウンミレライト型Ca2Fe2O5は他の2つの触媒に比べて高いPM燃焼活性を示すことが明らかとなった. 次年度は研究項目①②を引き続き並行して実験を継続するとともに,①②で調製した触媒を用い,③のPM触媒への応用を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年の最終年度は,下記の(1), (2)の触媒調製の項目を引き続き検討するとともにまとめる.また,未測定試料および新たに得られた試料について,(3)の項目に示すようなPM酸化反応へ応用する. (1)Aサイトへのアルカリ土類金属イオン添加方法の検討(継続):2価アルカリ土類金属イオンを含む金属シアノ錯体前駆体を調製して,低温合成により高表面積の複合酸化物を得る方法を確立する.(a)前駆体の焼成温度と複合酸化物の構造との関係を系統的に調べる.(b) 得られた酸化物の結晶性をXRDおよびTEMにより調べ,前駆体のどのような物性が結晶性に影響を与えるのかを明らかにする. (2)金属を高分散担持したペロブスカイト型酸化物の調製法の検討(継続):第一遷移金属を含浸担持したLaFeO3ペロブスカイト型酸化物では金属が分散担持していることがXRD測定で予想できている.令和3年度では,金属高分散化の原因を究明するために基本的な物性データ(表面積(BET),粒子形態(FE-SEM),表面金属イオンの電子状態(XPS),結晶性(XRD)など)を焼成温度,焼成雰囲気を変えた触媒に対して取得する.また,残存する表面炭酸イオン種が高分散化の原因になっている可能性もあるため拡散反射IR,TPDを用いて表面状態を観察する. (3)調製した触媒のPM酸化触媒への応用(継続):(1), (2)で調製した触媒を用いてPM燃焼試験を行うとともに令和2年度実験でPM酸化に高活性であったブラウンミレライト型Ca2Fe2O5の触媒活性因子を究明する.
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