本申請課題では、汎用元素からなる金属シリサイドの化学処理によるナノ構造制御法の開発と、触媒・触媒担体・吸着材料としての応用を進めている。微細化やナノスケールでの形態制御を行うことで、特異な物性発現や飛躍的な特性の向上を期待できる。本年度は、花弁状構造を持つカルシウムシリサイド(CaSi2)を用い、Caサイトあるいは二次元Siネッワークの特性と、高比表面積構造を活かした吸着材料・触媒担体としての利用について検討した。具体的には、以下の項目を中心に研究を進めた。(1) 貴金属のみならず鉄やニッケルなどの卑金属の塩の水溶液にCaSi2を加えると、それらの酸化物がCaSi2表面に固定化されることを見いだした。また、Caサイトとの親和性の高いリン酸イオンも捕集することができ、吸着性能と比表面積には良い相関関係が見られた。カチオンとアニオンの両方を対象とする吸着材料として使用できることを示した。(2) 酸化物担持触媒の調製では前駆体物質の分解のために、空気中での加熱処理が一般的に必要である。シリカ(SiO2)などの他の触媒担体とは異なり、加熱処理せずともCaSi2表面には酸化ニッケル(NiO)粒子を担持できた。条件を制御すると共に高比表面積構造を活かすことで微細なNiO粒子を担持でき、アルコールのアルデヒドへの酸化反応において高い触媒活性を示すことを確認した。(3) 水蒸気の吸着測定から、CaSi2が疎水的な性質を示すことを確認した。CaSi2に白金を固定化した触媒は、有毒な一酸化炭素や食物の熟成を進めるエチレンの低温での酸化分解において優れた触媒特性を示した。
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