研究課題/領域番号 |
19K05155
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
有谷 博文 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (40303929)
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研究分担者 |
田中 庸裕 京都大学, 工学研究科, 教授 (70201621)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタン芳香族化 / Mo/H-MFI触媒 / V共修飾 / 失活抑制 |
研究実績の概要 |
触媒として用いるMo修飾H-MFIおよびそのGa部分格子置換担体(水熱合成法により合成)については概ね合成を終え、Mo修飾およびMo-V共修飾条件の活性への影響を検討している段階である。これと並行して各触媒のMTB活性種の局所構造解析をMoのL3殼XANESを中心として評価を行っている段階である。 これまでの検討より、5wt%Mo修飾条件においては、750℃でのメタン脱水素芳香族化活性はAl高組成化における高活性化傾向が顕著であることがわかっているが、そのH-MFI担体の水熱合成では必ずしも十分な結晶性が得られていない。そのためGa非含有担体については国外市販品を取寄せの上で活性比較も行った結果、市販品の方でさらに高活性の傾向が認められた。 一方で、H-MFIのAl組成いずれにおいても反応時水素共存による一定の炭素析出失活抑制効果はメタン/水素比が0.1以上で認められたことから、既存の結果も踏まえ触媒試料は一酸化炭素による還元前処理、水素共存条件はメタン/水素比を0.1とし、各Mo/H-MFI系触媒の活性評価、とくに格子内Ga部分格子置換効果並びにMo-V共修飾効果について現在検討を進めている段階である。さらにこれらも含め、すべての反応後触媒における触媒上の生成炭素量の分析を同時に進めている。 現時点での結果として、(1)Mo/V=10-40の範囲でV共修飾による失活抑制効果が顕著であるが、初期活性をやや低下させる傾向もあわせて認められること、(2)H-MFIへのGa部分格子置換では、骨格内Al/Ga=50-100の場合に失活抑制効果が認められるが、反応の誘導期が長くなる傾向と合わせて初期活性の低下がみられることから、Mo炭化物活性種の形成のためにさらに反応条件の検討を要することが推論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度内はCOVID-19感染拡大による緊急事態宣言(埼玉県)の影響で、4月から7月の間に大学および研究室への入構制限が長期間にわたり生じた。この入構制限は8月以降に段階的に解除されたものの、時間的制約(とくに退出時刻の制限)は年度内継続された。この入構制限時期およびその解除後も、実質的に実験研究そのものを停止せざるを得なかった時期(入構制限期間中の大学休講措置に伴う実験科目の集中講義等)が生じたことから、研究代表者単独での実験研究進捗には極めて制約が大きいことにより、研究計画の進展には大きな障害となった。結果として、これらによる研究進捗の遅延はあまりにも大きく、結果的に年度計画の半分も進捗が達成できない状況に至った。 このような状況の中ではあるものの当初研究計画に沿った実験研究の進展を進めた結果、触媒の調製および反応活性評価については当初計画の7割程度まで達成し、さらに活性評価のための常圧固定床反応装置の一部改良(GCカラム条件の改善)を加えた結果、概ね問題のない活性評価が継続的に可能となった。その一方で、当初予定していた分子レベルでの活性種構造解析については大幅な遅延が生じ、とくに学外機関での共同利用実験研究の遅れ(2020年度上半期については緊急事態宣言対象都道府県からの出張が制限されたことが主な背景として)が顕著となった。そのため、いわゆる構造解析・活性種評価については次年度の研究予定として延期せざるを得ない状況が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に研究計画からの遅延が生じたものの、当初計画からの大きな変更は行わず、Mo/H-MFIを基盤としたメタロシリケート化・Mo活性種二元機能制御によるメタン芳香族化高活性・高耐久性触媒の設計を進めるとともに、前年度の活性評価に基づくMo活性種およびH-MFI骨格構造の構造解析を合わせて行う方針であり、これにより本活性因子の詳細な解明および失活要因の追求を進める。 まず、現在進行中のMoへの第二成分共修飾として複合ポリ酸となるVおよびNbの共修飾による高活性化および失活抑制効果について検討を進める。V共修飾での影響についてはMo/V=10-40の微量共存で初期活性にやや低下が生じるものの失活抑制効果については顕著であることから、同様の検討をGa部分格子置換担体でも行うとともに、Vに比べ炭化活性種形成は困難であるが酸化還元活性の低いNbを用いた共修飾効果についてあわせて検討を進める計画である。これらすべての触媒において、メタン芳香族化反応時に形成される炭化活性種の構造解析並びに失活要因である炭素析出量の検討を合わせて進める計画である。 なお、2021年度については緊急事態宣言発令がされていない現状であるため、活性種構造解析についても学外の施設を積極的に共同利用実験にて行う計画であり、とくに前年度実施した構造評価に関するMoのL殻XANESを中心とした解析のみならず、XAFSおよびXPSを用いた活性種構造評価へと拡大することにより、Mo炭化物活性種の微細構造評価とその失活過程での炭化還元的変化の追跡、並びにMoとは直接関係しないH-MFI上の強酸点での炭素析出がGa部分格子置換による抑制の可否など、これまでの活性評価の結果をもとにその高活性・高耐久因子の解明に向けた研究を進め総括へと運ぶ予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は当初研究計画からの変更(前年度4-7月の大学入構制限措置に伴う実験計画の変更、およびそれに伴う前年度8月以降の見直しに伴う変更)が生じたため、主に消耗品費となる予算分について残額が生じた。これは実験計画からの遅延にも伴うものであるため、次年度予算分と合わせて実験研究上の消耗品費として使用する計画である。加えて、次年度は研究の総括とあわせて、遅延が生じている実験研究(活性試験と評価、および構造解析とその評価)分に対し予算額の全額を消耗品費のみに充当する計画である。なお、学会での発表および論文としての公表も計画するが、とくに学会に関しては実施方式(出張を伴うかオンライン実施か)等に不明な点が多いため、本予算からの旅費支出が見送ることとした。
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