研究課題/領域番号 |
19K05156
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
奥村 和 工学院大学, 先進工学部, 教授 (30294341)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゼオライト / ホスフィン / パラジウム / 錯体 / 辻-トロスト反応 |
研究実績の概要 |
2019年度はゼオライトにパラジウムホスフィン錯体であるPd(PPh3)2Cl2を担持した触媒のキャラクタリゼーション、および触媒反応をおこなった。この錯体をトルエンに溶解しゼオライトを投入したのちに、80℃で加熱するという簡単な操作によって錯体を担持した。その結果、ベータ型ゼオライトにこのホスフィン錯体を約0.1 wt%担持できること、担持した後も錯体の構造を維持していることが分かった。担持後の錯体の構造はPd K-edgeのX線吸収微細構造法と赤外吸収スペクトルによって確認した。またPd(PPh3)2Cl2錯体をベータ型ゼオライトに担持した触媒が辻-トロスト反応に高い活性、および再利用性を示すことを見出した。数種類の基質に対する適用性も調べた。さらに、二座配位のホスフィンを有するパラジウム錯体をさまざまな構造・組成を有するゼオライトやシリカなどの担体に担持し、その触媒活性を調べた。その結果、二座配位の錯体を配位子とするパラジウム錯体はPd(PPh3)2Cl2よりも多くの量が担持されること、またホスフィン間のアルキル鎖の長さによって活性が大きく変化することを見出した。特にMFI型のゼオライトを担体とした場合に高い活性を示した。一方、Al2O3やMgOなどのアモルファスの担体を使用すると、担持する段階で錯体が金属パラジウムに分解し、ゼオライトを担体とした場合とは全く異なる挙動を示した。これらの錯体の構造もX線吸収微細構造法によって分析をおこなった。今後は上記の二座配位ホスフィンを配位子とした錯体をゼオライトや高い表面積を有する担体に担持させた触媒を中心に研究を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はPd(PPh3)2Cl2錯体をゼオライトの外表面に担持させた触媒の研究をまとめ、投稿論文として発表した。さらに二座配位のホスフィンを有するパラジウム錯体がゼオライトに強く吸着すること、さらにパラジウムの配位子である二座配位ホスフィンの構造によって活性が大きく変化することを見出した。ロジウムなどのパラジウム以外の遷移金属を有する錯体にも同じ方法で錯体を分解させずにゼオライトの外表面に簡便に担持することができれば、新たな展開が期待されるため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に二座配位ホスフィンを配位子としたパラジウム錯体が分解せずにゼオライトの外表面に強く吸着することを見出したことから、この触媒を中心に研究を進める。2つのホスフィンを繋ぐアルキル鎖長を1~6まで変化させ、アルキル鎖長によって担持したパラジウム錯体の構造や触媒作用がどのように変化するのかを調べることによって、なぜある構造を有する二座配位ホスフィンを配位子としたパラジウム錯体がリンカー分子をしようせずに担持することができ、高活性を示すのかという理由を明らかにする。2019年度は調製した触媒によって辻-トロスト反応を実施したが、2020年度はこの触媒を鈴木カップリングなどの他のC-C反応へ展開できないか検討をおこなう。結合さらにロジウムなどのパラジウム以外の遷移金属を有する二座配位ホスフィンをゼオライトの外表面に担持させて、その構造・触媒作用を調べ、触媒としての可能性を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ゼオライトに担持することを予定していた一部の種類の錯体を2020年度に購入して使用することとしたため、またガスクロマトグラフィーに使用していたヘリウムを窒素に切り替えたことから、ガスにかかる費用を抑えることができたために次年度使用額が生じた。2020年度はこの費用を錯体合成のための試薬・ガラス器具の購入、およびNMRやGCによる反応追跡のための消耗品に充てる。
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