研究実績の概要 |
2020年度はさまざまなパラジウム錯体をトルエン中で加熱することで、トリフェニルホスフィンなどの配位子に保護されたパラジウムナノ粒子が生成することを見出した。また、ゼオライトとの共存下で同様にトルエン中でパラジウム錯体を加熱すると、0価のパラジウムナノ粒子がゼオライトに担持すること、およびこのパラジウムナノ粒子がクロロベンゼン誘導体を基質とした鈴木カップリング反応に高い活性を示すこと、パラジウムの担持量が低い触媒ほど高い活性を示すことを明らかにした。TEM,TG-DTA,FT-IR,XAFS,窒素吸着によるキャラクタリゼーションの結果、このパラジウムナノ粒子はゼオライトの外表面付近に存在し、配位子が外表面付近の細孔に存在していることもわかった。しかし、なぜゼオライトがパラジウムの担体として特異的に効果があるのかという重要な点は不明であり、今後検討することにした。一方、二座配位ホスフィンとゼオライトを混合・加熱すると、特にY型ゼオライトにおいてその細孔内に二座配位ホスフィンが自発的に入り、さらに塩化パラジウム溶液中で加熱するとY型ゼオライトのスーパーケージ内でパラジウム錯体が形成すること、およびこのパラジウム錯体が辻・トロスト反応に活性を示すことを見出した。Pd K-edge XAFSによって解析をおこなった結果、特定の二座配位ホスフィンを使用した場合にPd錯体の微細構造が、担持していないものと比べ、ゼオライト内で変化していることが示唆された。
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