研究課題/領域番号 |
19K05157
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
尾中 篤 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (10144122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 層状窒化炭素 / 多孔質窒化炭素 / 熱濃硫酸処理 / アルカリ処理 / 固体塩基触媒作用 / 水中ニトロアルドール反応 |
研究実績の概要 |
積層構造のg-C3N4から多孔質化nanoC3N4を合成することに成功した.この手法は,①室温で濃硫酸中に浸漬,②残留硫酸をアルカリ水溶液で除去,③含まれる水をEtOHに置換後乾燥,という3工程からなる.この工程を経て導入されたアルカリ金属イオンは,メレム骨格の複数の窒素原子で強くキレートされ,従来のg-C3N4を単にアルカリ担持しただけとは異なるユニークな構造をとる.この構造体が生じる要因は,アルカリ処理時に,架橋する-NH-基のプロトンの引抜きで生成したアニオンが,左右に連結したメレム環上に広く非局在化し,環上の窒素は広範囲で陰電荷を帯びることによる.つまりアニオン性窒素原子が多座配位子として機能してアルカリ金属イオンを強くキレートしていると考えられる.金属イオンの強固な固定化は,水洗を繰り返しても塩基成分が溶出しない結果からも伺える. 得られたnanoC3N4を元素分析した結果,連結したメレム環6個当たり,1個のナトリウムイオンを含んでいた.このnanoC3N4を水中で固体塩基触媒として用いると,アルデヒドとニトロメタンによるニトロアルドール反応が高効率で進むことを明らかにした. さらに,上記手法で①の濃硫酸処理温度を,100℃まで昇温すると,g-C3N4は完全に濃硫酸に溶解した.この試料に②,③の処理を施して得られた高温濃硫酸処理窒化炭素は,分析の結果,nanoC3N4に比べて比表面積は半分程度であったが,5倍量のナトリウムイオンを含むことがわかった.そこで,上記水中ニトロアルドール反応において,nanoC3N4と熱濃硫酸処理C3N4の固体塩基触媒作用を比べた結果,後者の方が優れていた.後者の新規材料は,水中で溶け出さない固体塩基触媒としての有効活用が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
春先からの新コロナ蔓延事情により,研究を一緒に行うことを期待していた学生の大学構内の立ち入りが秋までの半年間禁止されていたので,十分な研究時間を確保することができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
翌年度もコロナ禍は続き,4月に入って緊急事態宣言の発出中である.学生の入構は今のところ禁止ではないが,早めの実験終了時刻が指示されている.今後蔓延事態が悪化する方向に進むと,再び入構禁止措置がとられる可能性もあり,研究時間の確保の見込みが立たないのが心配である.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍での研究時間の確保が難しい状況下でも,支出額が多かった理由は,大型機器の高額部品が壊れたため,その買替えが必要になったためである. 次年度使用額はあるとは言え少額であるので,請求した翌年度分の助成金を当初通り使用する計画である.
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