研究課題/領域番号 |
19K05159
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
冨田 衷子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70392636)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 貴金属 / ナノ界面制御 / 水処理 / 酸化触媒 |
研究実績の概要 |
本研究は、水を利用した熱処理を行うことで貴金属が移動する現象を利用し、貴金属ナノ粒子触媒の構造制御を行う。これまでの研究で酸化鉄およびセリアを添加した時に高温での白金シンタリングが抑制されることとプロパン酸化活性が向上することがわかっていたが、セリア担持については詳細が未解明であった。2019年度には触媒処理条件を変化させて処理前後の触媒物性および活性の変化を解明することに注力した。 セリア担持アルミナ(CeO2/Al2O3)を担体とした白金ナノ粒子触媒(Pt/CeO2/Al2O3)で、CeO2の担持量と触媒処理方法を変化させた。Al2O3上でCeO2はCe量3wt%程度までは高分散に存在するが、それ以上ではCeO2の粒子が析出していた。各試料のCeO2の還元特性を昇温還元法で測定したところ、Ce(IV)からCe(III)への還元温度は、CeO2/Al2O3にPtを担持(Pt/CeO2/Al2O3)することによって低下し、これに水処理を行うとさらに低下した。このことから、水処理によってPtとCeO2の界面が形成されたことが示唆された。各種触媒に800℃熱処理を行った後のPt粒子径およびプロパン燃焼活性を評価したところ、少量のCeO2を添加して水処理を行った触媒ではPtのシンタリングが抑制され、プロパン酸化活性が高かった。最も効果があったのは、添加するCe量3.6wt%の時であったことから、高分散状態のCeO2との界面形成によりPtのシンタリングが抑制され、CeO2が容易に還元されることおよびPtの電子状態変化によりプロパン酸化活性が向上したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、水を使用した熱処理(水処理)を行うことで、貴金属が移動する現象を利用し、貴金属ナノ粒子触媒の構造制御を行う。この現象の機構を解明し、処理条件を最適化して構造制御の手法確立を目指す。水処理後に触媒構造や触媒物性がどのように変化しているのか詳細には未解明であったところ、2019年度には特徴的な変化を捉えることができた。 当初予定していた貴金属の粒子径制御は研究途中であり2020年度も継続して行うが、界面形成による物性変化を先行して行うことができた。2020年度は粒子径制御について継続して研究するとともに、2019年度の研究結果を元に界面形成変化を物性変化から評価できる。従って、2019年度の達成度はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に得られた知見をもとにして、以下のように研究を進める。 貴金属ナノ粒子のサイズ制御では、粒子径制御のために、水を使用した熱処理(水処理)による貴金属移動の条件の探索を継続する。具体的に調べる条件は、水蒸気濃度と温度、処理するガスの水素濃度、および処理前の触媒の状態等であるが、一部は2019年度に行っているので継続して条件を変えた測定を行う。その結果得られた触媒について金属分散度測定や透過電子顕微鏡観察で貴金属粒子径を測定する。 貴金属と助触媒酸化物との界面形成では、2つの設計方針に基づいて研究を遂行する。第一に酸化還元の起こりやすい酸化物を助触媒として使用して、貴金属との界面形成を目指す。有効な界面が形成されれば、貴金属の電子状態や還元特性が変化することが20119年度の研究で分かったので、赤外分光測定によるCO 吸着やX線光電子分光分析で電子状態を、昇温還元法で還元特性を評価する。第二に酸化物のアンカー効果に注目し、担体との結合が強い酸化物を使用する。貴金属が高分散なクラスター状態で安定に存在する条件を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初見積金額より安価で購入できたため残金を次年度に繰り越す。 2020年度の使用計画は提出済みの交付申請書の通りである。
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