本研究は、触媒処理によって貴金属ナノ粒子触媒の構造制御を行うことを目的とした。手法として液体の水を利用した熱処理(水処理)を行うことで貴金属が移動する現象を利用した。触媒処理に対して貴金属はそれぞれ異なった挙動を示すと考えられるため、適切な処理条件の選択が重要である。そこで貴金属の種類を変えて、各種熱処理と水処理による貴金属粒子径の変化を比較し、さらに水処理条件の影響を検討した。 Pt/Al2O3触媒では大気中約600℃以上の焼成でPtが顕著に粒成長する。本研究では、そのような粒成長が起こらない低温(200~400℃)において還元雰囲気での処理を行うことで穏やかな粒成長を伴う構造制御を目指した。貴金属粒子径は金属分散度から見積もった。無加湿水素中での熱処理後を基準として比較した場合、Pt/Al2O3触媒では、50%加湿水素中熱処理後の粒子径は1.1倍程度であったが、液体の水を使用した水処理では1.4倍となった。このように水処理は無加湿及び加湿水素中熱処理と比べてPtの移動が促進された。この効果は熱処理温度200℃及び400℃で同程度であった。同様にRh/Al2O3触媒では、50%加湿水素中熱処理後の粒子径は1.1倍、水処理後は1.3倍となった。これに対してPd/Al2O3触媒では、3種の処理方法で粒子径の差は小さかった。しかし400℃処理では200℃処理後と比較して粒子径は1.1~1.2倍となり、水の存在より温度の影響が大きかった。 以上より、担持触媒上で貴金属を移動させることによる、貴金属粒子径制御及び貴金属と助触媒酸化物等との界面形成促進のためには、貴金属の種類によって異なる処理方法を選択することが必要であり、PtおよびRhの場合には水処理の有効性が示唆された。
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