研究課題/領域番号 |
19K05161
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
三宅 英雄 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (50362364)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱測定 / スマートセル / 微生物増殖 |
研究実績の概要 |
スマートセルに対応した微生物増殖測定技術の開発を行うためには、様々な培養条件に対応する必要がある。微生物増殖測定においては、OD測定やATP測定が一般的であるが、OD測定においてはガラス容器の外から一定波長の光を当てることで測定可能な装置もあるが、菌体が凝集するものや培地に不溶性物質が入っていると測定は困難である。そこで本研究期間では、それらの増殖に伴う発熱を指標とし、その発熱を測定可能な最小のセルを搭載した微生物熱測定装置の開発を行うことを目的とした。 本研究で使用した等温熱量計は、試料の発熱を熱量計内のシステムリファレンスとの温度差をシグナルとして検出する、示差型の熱量計である。5mm程度の銅製の薄い板(セル)と3 cm程度のアルミ製のヒートシンクの間に既存機でサーモモジュールを挟むことで小型のセルを8個作製した。これらのセルを温度のぶれが少ない市販のペルチェ方式のインキュベータの中に入れることで周りの熱から断熱した。セルの測定誤差を評価するため冷却速度定数を指標としたセル間の比較を行った。冷却曲線はセル間でばらつきはなく、全てのセルで曲線の歪みもなかった。変動係数は、全てのセルで変動係数は10%以下であり、セル間での結果に差はなかった。 ヒートシンクの厚みの影響を調べるため、追加でヒートシンクを足すことで比較検討を行った。その結果、ヒートシンクの厚みを増す方が熱の感知の追従性が上がることが分かった。 大腸菌、酵母、Clostridium属などの微生物の静置培養における増殖過程の測定を行った。少しノイズが含まれるが増殖過程を追跡することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載した通り、小型のセルを8個作成し、その基本性能を評価した。その結果、概ねこちらが予想した範囲での感度で熱を追従できることが分かった。実際に様々な微生物を用いてそれらの増殖過程を追跡したところ、感度はやや落ちるが、OD測定やATP測定とほぼ同等の精度で測定することができることが分かった。ややノイズが大きかったので、ヒートシンクの厚みを変更したところ改善することができた。これらの結果から、当初想定していた範囲で小型センサーを開発することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に作製した小型セルを10個程度作製し、実証試験を行う。この時、微生物の発熱が隣のセルに影響を及ぼす可能性があるため、セルの間隔の検討を行う。また、間隔を密にする方が多くのセルを搭載できることから、各セルを囲うような格子状の断熱材を取り入れることでセル間の熱の影響を調べる。これらの検討より、適切なセルの設置位置および搭載可能な密度を調べる。 レベルは低いがノイズの問題が生じたため、その対策を行う。具体的には配線の見直しと、小型セルを断熱するためのペルチェ方式のインキュベータからのノイズを調べる。 上記の検討から最適なセルの搭載位置を決定し、静置培養で微生物増殖過程を測定し、既存機との性能評価の比較を行う。セルの配置等の検討を行うことで既存機と同定レベルの測定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定してたサーモモジュールを購入することができず、2020年度に代替品を購入する予定である。また、それにあわせて、ヒートシンクおよび銅板を購入する予定である。
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