研究実績の概要 |
スマートセルに対応した微生物増殖測定技術の開発を行うためには、様々な培養条件に対応する必要がある。微生物増殖測定においては、OD測定やATP測定が 一般的であるが、OD測定においてはガラス容器の外から一定波長の光を当てることで測定可能な装置もあるが、菌体が凝集するものや培地に不溶性物質が入って いると測定は困難である。今年度は、測定セルと断熱容器を独立させ、振とう培養器にその独立した測定セルを搭載することで振とう培養に対応した微生増殖測定技術の開発を目的とした。 試料セルは、フラスコなどの容器に入った試料が接する面を銅板とし、それにサーモモジュールを接着させた。そして、サーモモジュールが受けた熱を速やかに逃すためにサーモモジュールにアルミニウム製のヒートシンクを挟むことで試料セルとした。これを振とう培養器に搭載し、断熱容器として市販のペルチェ式のインキュベータにそれらを格納した。 微生物として大腸菌JM109を用いた。40 mLのLB培地が入った100 mL容の三角フラスコに植菌し、これを試料とした。各試料は本装置で37℃、138 rpmで振とう培養を行い、増殖に伴う発熱は試料セルで電気信号に変換され、10分間隔で自動記録した。熱測定から得られるサーモグラムは時間あたりのmVであり、熱損失を補正し、積分することで微生物増殖量に相当するサーモグラムと各パラメータ(発熱量q, 総発熱量Q, 発熱ピーク時間t p, 総発熱量の半分に達する時間t1/2)を算出した。本装置で測定したサーモグラムとOD測定によって得られたデータを比較することで本装置の性能を調べた。その結果、本装置で測定した各時間における発熱量qとODの値の間に高い相関を得た。したがって、本装置で得られたサーモグラムは微生物増殖を反映していることが分かった。 以上の結果より、振とう培養に対応した微生物熱測定装置を作製し、その測程技術を開発することができた。
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