研究実績の概要 |
アカテガニRNA-seqのデータ解析から、リグニン分解に関係する可能性の高いラッカーゼ遺伝子産物 (#24131)を見出し、アカテガニ中腸腺cDNAからPCRで増幅し、大腸菌発現ベクターにクローン化した。アカテガニ中腸腺ではラッカーゼ遺伝子産物は11種類が検出されたが、当該ラッカーゼが全発現量の90%以上を占めており、大きな役割を担っているものと期待している。大腸菌では精製するためにHis-tag融合蛋白質として本ラッカーゼを生産し、精製することができた。このラッカーゼの活性を検出するために、グアヤコール、2,6-ジメトキシフェノール(2,6-DMP)、ABTSというリグニン類縁化合物と反応させてみたところ、2,6-DMPとABTSに対して高い反応性を示した。グアヤコールに対しては反応しない。これまでの研究で高いグアヤコール反応活性をアカテガニのメスから検出したという報告をおこなっているが、今回単離したラッカーゼはこの活性には関与していないことがわかった。しかし、多い発現量、高い反応性という点から考えると、本酵素もリグニン分解に対して大きな役割を果たしていることが期待される。この酵素遺伝子のC末側には銅結合部位が2箇所存在しており、銅の必要性が推定された。実際、反応には銅が必須ということがわかった。上記のグアヤコール酸化活性には銅は不要であり、酵素の特性に大きな違いが見られる。また、この酵素遺伝子の活性から、アカテガニもこの活性を示すのではないかと考え、中腸腺での2,6-DMP, ABTS酸化活性を調べてみると、大きな反応性を示すことがわかった。以前検証したときにはほとんど活性を検出できなかったが、これは銅を反応に加えていなかったからだと思われる。いずれにせよアカテガニ中腸腺にはリグニン分解活性を示す酵素が最低2種類は存在していることが明らかになった。
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