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2020 年度 実施状況報告書

草食性陸ガニのリグニンバイオマス分解プロセスの解明とその応用

研究課題

研究課題/領域番号 19K05173
研究機関名城大学

研究代表者

三宅 克英  名城大学, 理工学部, 教授 (90252254)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードリグニン / ラッカーゼ / グアヤコール / 2,6-ジメトキシフェノール / 陸ガニ / バイオマス
研究実績の概要

クロベンケイガニを愛知県矢作川流域、石川県加賀市鹿島の森から採集し、解剖後、肝臓と膵臓の機能を持つといわれている中腸腺、胃、腸を採取し、粗酵素液を調製した。またこれとは別に中腸腺から全RNAを精製し、RNA-seq解析に供した。RNA-seqの分析結果から、アカテガニの場合と同様に、発現量の非常に高いラッカーゼ転写産物を同定した。アカテガニの酵素とのアミノ酸配列の相同性は94.6%であった。この酵素遺伝子cDNA全長を大腸菌発現システムでHis-tag融合蛋白質として発現させて精製した。この酵素からはグアヤコール酸化活性は検出されなかったが、2,6-ジメトキシフェノール酸化活性(ラッカーゼ活性)が検出された。この活性はグアヤコール酸化活性と異なり過酸化水素の存在は必要なかった。他の典型的なラッカーゼと同様である。また大腸菌培養の際には銅を添加することが活性発現には不可欠であることもわかった。酵素の構造が複数の銅結合部位を含んでいるという事実と一致する結果である。以上の結果は、アカテガニ及びクロベンケイガニ由来の両方の酵素で同じ結果となった。これまでは草食性陸ガニのリグニン分解活性として各臓器のグアヤコール酸化活性を中心に解析してきたが、この結果を受けて、2,6-ジメトキシフェノール酸化活性についても検討を行った。非常に興味深いことに、アカテガニにおいては、食糧として植物性のもの(葉、木)を与えたもののみ、この活性が検出された。一方草食性の強いクロベンケイガニにおいては食料の種類に関わらず活性が検出された。この結果は、本酵素が、植物性の材料を消化することに大きな役割を果たしている消化酵素であることを強く示唆するものであった。まだ大腸菌での発現が封入体の形成により不十分であるため、活性の詳細な解析ができていないが、最終年度でこれを解決し、応用への布石としたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

クロベンケイガニのRNA-seqに成功し、ラッカーゼの存在と重要性を確認できた。この酵素のリグニン分解への寄与も間接的ではあるが、証明できたと考えている。グアヤコール酸化酵素の特定ができていないので、ここが最大の課題になる。いくつかの酸化酵素、過酸化酵素が候補となっている。現状、最も発現量の高い過酸化酵素であるグルタチオンパーオキシダーゼに着目している。過去の報告では、この酵素がグアヤコール酸化活性を示したという事実はないため、どのような結果になるかは予測できない。ただ、グルタチオン-S- トランスフェラーゼがリグニン分解に関与するという報告はあるので、酵素は異なるが期待をしている。この酵素は活性中心にセレノシステインを含むため、大腸菌での発現は難しい可能性があり、大腸菌以外では昆虫細胞での生産を予定している。

今後の研究の推進方策

ラッカーゼの異所発現の改善と酵素活性の解析、応用への検討を行いたい。真核生物由来の遺伝子発現用にコドン使用頻度を改良され、さらにはS-S結合を最適化するように酸化状態の調整がなされた大腸菌を使用する。また、封入体形成の原因となっている可能性のあるN末端のシグナル配列を欠失させた組換え酵素も作成する予定である。昆虫細胞での発現系の使用も検討する。
グアヤコール酸化酵素候補遺伝子の探索と活性検討も行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 草食性陸ガニのリグニン類縁体酸化酵素群の解析2021

    • 著者名/発表者名
      ○三宅克英、安部 水葉、小川 晃史、下村 真司、坂本 大樹、馬場 保徳
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度大会

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公開日: 2021-12-27  

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